プライド 第10話
2013年 09月 17日
*2014年 6月 東京*
彼女は優しい表情で何かを見つめている。
俺は、彼女のこういう穏やかなところが好きなんだよな。
「美桜、何見てんの?」
「ん?あの子たちが初々しいなぁ…て思って。」
彼女の視線の先を見ると、若い男女がいた。
二人とも大学生だろうか。
どこからどう見ても付き合いたてのカップルだ。
男の方の手を見てみると、必死に手を繋ぐ機会をうかがっている。
女の子は、男と手が触れるたびに照れくさそうにしている。
「たしかに初々しいな(笑)」
「でしょ?」
彼女はそう言って、懐かしいものを見るような目でそのカップルを見つめた。
「美桜にもああいう思い出があるの?」
あのストラップくれた男との…。
「誰にだってあるんじゃないの?
…あ、早くしないと映画始まっちゃう!」
「うわ、ホントだ!昼飯食った店でゆっくりしすぎたな。ちょっと急ぐか。」
「うん。」
美桜とは、1年前合コンで知り合った。
全く行く気のなかった合コンだったけど、美桜に会えたのが大収穫だった。
同い年で、周りから結婚を急かされている人間同士話があった。
穏やかな性格・仕事に誇りをもっている姿に惹かれるまで、あまり時間はかからなかった。
付き合い始めてからも、彼女の印象に変化はなかった。
穏やかで、仕事に誇りをもっていて、芯が強くて…。
けれども、一つだけ引っ掛かることがある。
美桜は、全くといっていいくらい自分の話をしない。
俺の話は何でも聞いてくれる。
俺を立ててくれる。
でも、俺に一切頼ってこない。
この前、腐れ縁の奴にこんな話をしたら、
「良い彼女じゃん!
贅沢言いすぎなんだよ!その彼女と結婚できなかったら、お前一生独り身だぞ!早くプロポーズしろよ!」
と説教されてしまった。
アイツの言うことは正しいけど、『俺は美桜の何なのだろうか…』と時々思う。
美桜のプライベート用のケータイには、少し古びたストラップがついている。
美桜の誕生石のサファイアがついているストラップだ。
そのストラップの話をふってみると、美桜は「ちょっと古いけど綺麗でしょ?私、物持ちがいいの(笑)」と笑う。
だけど…あのストラップは、昔の男からもらった物じゃないか?
そして、美桜はまだその男を好きなのでは…と考えてしまう。
何も根拠はないけど、あのストラップには何かがある気がする。
その考えがちらつくせいで、プロポーズもできない。
「亮!ぼんやりしてどうしたの?」
「ん?何もない何もない!急ごう!映画始まる!」
「うん。」
俺はいつものように不安をなかったことにして、美桜と映画館まで走った。
つづく
彼女は優しい表情で何かを見つめている。
俺は、彼女のこういう穏やかなところが好きなんだよな。
「美桜、何見てんの?」
「ん?あの子たちが初々しいなぁ…て思って。」
彼女の視線の先を見ると、若い男女がいた。
二人とも大学生だろうか。
どこからどう見ても付き合いたてのカップルだ。
男の方の手を見てみると、必死に手を繋ぐ機会をうかがっている。
女の子は、男と手が触れるたびに照れくさそうにしている。
「たしかに初々しいな(笑)」
「でしょ?」
彼女はそう言って、懐かしいものを見るような目でそのカップルを見つめた。
「美桜にもああいう思い出があるの?」
あのストラップくれた男との…。
「誰にだってあるんじゃないの?
…あ、早くしないと映画始まっちゃう!」
「うわ、ホントだ!昼飯食った店でゆっくりしすぎたな。ちょっと急ぐか。」
「うん。」
美桜とは、1年前合コンで知り合った。
全く行く気のなかった合コンだったけど、美桜に会えたのが大収穫だった。
同い年で、周りから結婚を急かされている人間同士話があった。
穏やかな性格・仕事に誇りをもっている姿に惹かれるまで、あまり時間はかからなかった。
付き合い始めてからも、彼女の印象に変化はなかった。
穏やかで、仕事に誇りをもっていて、芯が強くて…。
けれども、一つだけ引っ掛かることがある。
美桜は、全くといっていいくらい自分の話をしない。
俺の話は何でも聞いてくれる。
俺を立ててくれる。
でも、俺に一切頼ってこない。
この前、腐れ縁の奴にこんな話をしたら、
「良い彼女じゃん!
贅沢言いすぎなんだよ!その彼女と結婚できなかったら、お前一生独り身だぞ!早くプロポーズしろよ!」
と説教されてしまった。
アイツの言うことは正しいけど、『俺は美桜の何なのだろうか…』と時々思う。
美桜のプライベート用のケータイには、少し古びたストラップがついている。
美桜の誕生石のサファイアがついているストラップだ。
そのストラップの話をふってみると、美桜は「ちょっと古いけど綺麗でしょ?私、物持ちがいいの(笑)」と笑う。
だけど…あのストラップは、昔の男からもらった物じゃないか?
そして、美桜はまだその男を好きなのでは…と考えてしまう。
何も根拠はないけど、あのストラップには何かがある気がする。
その考えがちらつくせいで、プロポーズもできない。
「亮!ぼんやりしてどうしたの?」
「ん?何もない何もない!急ごう!映画始まる!」
「うん。」
俺はいつものように不安をなかったことにして、美桜と映画館まで走った。
つづく
by rin1119a
| 2013-09-17 17:13
| プライド