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JYJの妄想小説ブログです。妄想小説が苦手な方は閲覧しないでください。JYJも妄想も好きな方は是非どうぞ(^^)気に入ってもらえますように(*´∀`)


by 凛

運命の人 第6話

泣いている彼女を見ながら、自分の無力さを痛感していた。
あんなに辛いのを一人で抱え込んでいた。
佐伯さんの小さい体が余計に小さく見えて、俺まで泣いてしまいそうだった。

そんな彼女に言った言葉…あれで良かったのだろうか。
十分過ぎるほど頑張っている佐伯さんを、追い込んでしまったのではないか。
病院からの帰り道で、俺は佐伯さんのことばかり考えていた。


「深田のおにいちゃーん!」
そんな俺の耳に、聞き覚えのある可愛い声が聞こえてきた。
振り返るよりも先に、その声の主が俺に抱きついてきた。

「やっぱり深田のおにいちゃんだー!こんばんはー!」
「あやめちゃん!?どうしたの?」

思いがけない遭遇に俺が驚いていると…

「ハァハァ…あやめ…急に走り出さないで…危ないでしょ?」
寺川が息を切らしながらやって来た。
「ママ、ごめんなさい…。」

「寺川、お疲れ。てか、お前こんなとこで何してんの?」
「深田くんもお疲れさま。
今日はね、あやめには悪いけど、晩ごはんを外食で済ませようと思って…。あやめが通っている保育園がこの辺りだから、近くのファミレスに行く途中なの。
深田くんこそ、こんな所で何してるの?支店もお家もこっちの方じゃないのに。」
「あぁ、まあちょっと色々あってさ…。」
「そうなんだ。」

「深田のおにいちゃん、あやめたちと一緒にごはん食べようよ!」
俺と寺川が話し込んでいると、あやめちゃんが元気に言った。
「俺も一緒でいいの?」
「うん!あやめ、深田のおにいちゃんとお喋りしたいの!」
「深田くん、何か予定があるなら無理しないでね。」
「全然。何もないよ。…あやめちゃんとママと一緒にごはん食べよう。」
「やったー!深田のおにいちゃんとごはん~」

こうして、俺は寺川とあやめちゃんとごはんを食べることになった。


*****

「えっ!?そんな人の対応を新人一人にさせたの!?しかも、ブラックリストに載っていることを知ってて!?信じられない!その指導係ひどすぎる!いくら新人の子を気に入らないからって、やること大人げないよ!」

今日のうちの支店での騒ぎを寺川に話すと、温厚な寺川が珍しく怒った。
長い付き合いだけど、こんなに声を荒くしたとこなんて見たことない。
「ママーどうしたの??」
俺の隣に座っているあやめちゃんも、優しい寺川のいつもと違う様子に驚いたようだ。

「ごめんね。何でもないよ。
…それで、その新人の子は大丈夫なの?救急車で病院に運ばれたなんて…」
「命に別状はない。一応、今日一日は入院だけど。さっき病院に行ってきたんだけど、体よりも精神的なことの方が心配で…」
「そうよね…かわいそうに…。」

「なぁ…寺川…俺さ、病院で、その子にあんまり言っちゃいけないことを言ったような気がするんだ…。」
「…どんなこと言ったの?」
「『あんな女どもには負けるな。負けない方法は、誰からも文句をつけられないくらい、仕事ができる人間になることだ。君はそれができる人間だ。』…て。
彼女はもう十分過ぎるほど頑張ってるのに…俺は何にもしてやれてないのに…。」

寺川は俺の話を黙って聞くと、こう言った。
「…いいと思うよ。深田くんがその子に言ったこと。
だって、嫌がらせがそのレベルにまでいったら、もう止めようがないもの。
今回、深田くんはその指導係にかなりキツく言ったでしょ?もちろん、正しい対応よ。私が深田くんでも同じようにキツく言うと思う。
だけど、もう苛めてる側には何も言い様がないと思う。言えば言うほど、新人の子を悪く思うようになる。『支店長に取り入ってる!』ってね。
だから、その子が文句をつけられないくらいの人間になるしか、止める方法はない。
深田くんが新人の子に言ったことは、正しいよ。ただ…その子にとっては、精神的にかなり厳しいことなのはたしかだけどね。」

寺川はいつも通りの穏やかだけど、芯の強さを感じさせる口調で言った。

「で、深田くんの仕事は、その子がそうなれるようにサポートしてあげること。
その子は、深田くんに気にかけてもらえて、すごく嬉しいし安心してると思う。その子の信頼にこたえなきゃ。」

あぁ…やっぱりコイツにはかなわない…。器が全然違う。
寺川と話してると、毎回良いヒントをもらえる。

「ありがとう…。そうだな。その子さ、俺のこと信頼してくれてるんだ。うん…支店長として、しっかりこたえなきゃな。」
俺がそう言うと、寺川はニッコリと微笑みながらよくわからないことを言い出した。

「支店長として…だけでいいの?」
「はあ???それ以外に何があるんだ???」
「深田くん、その新人の子のこと随分気にしてるみたいだから。ただの部下の話をしてるようには思えなくて。」
「おいおい(笑)ただの部下にきまってるだろ?俺が独り身だからって、何でもかんでもそっち方面に結びつけるなよ(笑)」
「へぇー(笑)」

…ったく…寺川の奴…
俺が独り身なのをかなり心配してるみたいだけど、佐伯さんとどうこうなんてないにきまってるだろ。

まず、ただの部下だし。
佐伯さんは、素直で一生懸命で真面目な良い子だし、今どき珍しい素朴な子だ。
でも、一回り以上も年下だし。
佐伯さんだって、一回り以上も年上の男なんか嫌だろ。

…そんなことより、これからしっかり佐伯さんをサポートしないとな。


つづく
by rin1119a | 2013-11-02 03:22 | 運命の人