運命の人 第17話
2013年 11月 16日
「ママー何してるのー?」
「あやめ、おはよう。お友達とメールしてるの。」
「お友達?」
「うん。新しいお友達なの。」
昨日の夜、cherryで深田くんに会った。
深田くんと飲んでいると、とても可愛らしい女の子がやって来た。
引っ込み思案な雰囲気で、守ってあげたくなるタイプの可愛い子。ぎゅーってしたくなる感じ。
その子は、佐伯さん。
私が二次面接で面接した子だった。泣きながらだったけど、一生懸命で真摯な姿勢が印象的だった。
彼女は私のことを覚えてくれていた。しかも、憧れてくれているなんて…。
すぐに帰らなきゃいけなかったのが残念だったけど、ついさっき佐伯さんがメールをくれた。
メールの文面もすごく可愛くてキュンキュンしてしまった。
私の勘だけど、佐伯さんは深田くんのことが好きだ。深田くんを見る目を見たらわかる。
そして、深田くんも佐伯さんを好きだ。多分、深田くんが前から気にかけている新人さんは、佐伯さんだと思う。
深田くんが佐伯さんを見る目は、とても優しい。
優しくて真摯な深田くんと、少し引っ込み思案で可愛らしい佐伯さん…。
すごくお似合い。うまくいきますように。
…でも、佐伯さんは私と深田くんのことを誤解してそう。そこが心配。何も本人から聞いていないのに、私がわざわざ説明するのも不自然だし…。
それに、深田くん…自分のことは鈍そうで心配…。
*****
寺川さんは、本当に素敵な人だ。
メールもすごく可愛らしくて、同性の私でもキュンとしてしまう。
支店長が寺川さんを好きになるなんて、当然のことだ。
こんな可愛い人がそばにいて、好きにならない男性なんかいるのだろうか。
*****
「私、野球観戦初めてでしたけど、すごく楽しかったです!」
「楽しんでもらえて良かったー!」
今日は、佐伯さんと野球観戦に来ている。
彼女は野球観戦も初めてだし、普段あまり野球も見ないから、俺の趣味に付き合わせたみたいだな。
だけど、彼女はすごく楽しそうにしてくれたし、俺の野球話もニコニコしながら聞いてくれて…。
初めて会った時から気になってたけど、こうして一緒にいるとどんどん好きになる。
いつも可愛いけど、笑った顔が本当に可愛いんだ。見てるだけで幸せ。
今日…絶対に告るんだ!頑張れ、俺!
*****
山口さんはいい人。
こんな人が何故か私を気に入ってくれている。
一緒にいると楽しいし、気を使わずに素の自分でいられる。
「…あ、ここで大丈夫です。家はすぐそこのマンションなので…」
野球観戦の後、食事をして家の近くまで山口さんは送ってくれた。
「あ、うん…」
「今日ありがとうございました。すごく楽しかったです。」
お礼を言って、ペコリと頭を下げようとしたその時…
「佐伯さん!」
えっ!?
「や、山口さん!?」
私は山口さんに思いっきり抱き締められていた。
「…もう…俺の気持ち…バレバレだと思うけど…俺…………佐伯さんが好きなんだ!」
山口さんは大きな声で言った。
私のことが好き…。
抱き締められながら告白されるなんて…自分には縁のないことだと思っていたから、私は驚きで頭が真っ白だ。
「急にごめん。…今は多分俺のこと好きでもなんでもないと思う。だけど、これから好きになってもらえるように頑張るから…佐伯さんのこと大切にするから…俺と付き合ってほしい。」
山口さん…声も体も震えてる…。
いつも元気で明るい山口さんがこんな風になってるなんて…私のこと真剣に思ってくれてるんだ…。
その気持ちはすごく嬉しい。
だけど、山口さんが私を好きでいてくれてる気持ちと同じように、私も真剣に支店長のことが好きなの…。
そう考えて断ろうとした瞬間…私の頭に、支店長と寺川さんがよぎった。
『1回でいいからさ、飯付き合ってあげてくれない?』
支店長は、私と山口さんのことを応援しているんだ…。
『見た目も性格もめちゃくちゃ可愛いし、仕事はできるし、優しくて芯の強い子』
支店長は、あんなに素敵な寺川さんを好きなんだ…。
もう私なんか絶対にダメじゃない。
そう考えた私は、こう答えた。
「…私で良ければ、よろしくお願いします。」
「…マジ!?…やったー!!ありがとう!」
自分の想いを諦めるために取ったこの選択が、山口さんを…そして自分自身を苦しめることになる。
つづく
「あやめ、おはよう。お友達とメールしてるの。」
「お友達?」
「うん。新しいお友達なの。」
昨日の夜、cherryで深田くんに会った。
深田くんと飲んでいると、とても可愛らしい女の子がやって来た。
引っ込み思案な雰囲気で、守ってあげたくなるタイプの可愛い子。ぎゅーってしたくなる感じ。
その子は、佐伯さん。
私が二次面接で面接した子だった。泣きながらだったけど、一生懸命で真摯な姿勢が印象的だった。
彼女は私のことを覚えてくれていた。しかも、憧れてくれているなんて…。
すぐに帰らなきゃいけなかったのが残念だったけど、ついさっき佐伯さんがメールをくれた。
メールの文面もすごく可愛くてキュンキュンしてしまった。
私の勘だけど、佐伯さんは深田くんのことが好きだ。深田くんを見る目を見たらわかる。
そして、深田くんも佐伯さんを好きだ。多分、深田くんが前から気にかけている新人さんは、佐伯さんだと思う。
深田くんが佐伯さんを見る目は、とても優しい。
優しくて真摯な深田くんと、少し引っ込み思案で可愛らしい佐伯さん…。
すごくお似合い。うまくいきますように。
…でも、佐伯さんは私と深田くんのことを誤解してそう。そこが心配。何も本人から聞いていないのに、私がわざわざ説明するのも不自然だし…。
それに、深田くん…自分のことは鈍そうで心配…。
*****
寺川さんは、本当に素敵な人だ。
メールもすごく可愛らしくて、同性の私でもキュンとしてしまう。
支店長が寺川さんを好きになるなんて、当然のことだ。
こんな可愛い人がそばにいて、好きにならない男性なんかいるのだろうか。
*****
「私、野球観戦初めてでしたけど、すごく楽しかったです!」
「楽しんでもらえて良かったー!」
今日は、佐伯さんと野球観戦に来ている。
彼女は野球観戦も初めてだし、普段あまり野球も見ないから、俺の趣味に付き合わせたみたいだな。
だけど、彼女はすごく楽しそうにしてくれたし、俺の野球話もニコニコしながら聞いてくれて…。
初めて会った時から気になってたけど、こうして一緒にいるとどんどん好きになる。
いつも可愛いけど、笑った顔が本当に可愛いんだ。見てるだけで幸せ。
今日…絶対に告るんだ!頑張れ、俺!
*****
山口さんはいい人。
こんな人が何故か私を気に入ってくれている。
一緒にいると楽しいし、気を使わずに素の自分でいられる。
「…あ、ここで大丈夫です。家はすぐそこのマンションなので…」
野球観戦の後、食事をして家の近くまで山口さんは送ってくれた。
「あ、うん…」
「今日ありがとうございました。すごく楽しかったです。」
お礼を言って、ペコリと頭を下げようとしたその時…
「佐伯さん!」
えっ!?
「や、山口さん!?」
私は山口さんに思いっきり抱き締められていた。
「…もう…俺の気持ち…バレバレだと思うけど…俺…………佐伯さんが好きなんだ!」
山口さんは大きな声で言った。
私のことが好き…。
抱き締められながら告白されるなんて…自分には縁のないことだと思っていたから、私は驚きで頭が真っ白だ。
「急にごめん。…今は多分俺のこと好きでもなんでもないと思う。だけど、これから好きになってもらえるように頑張るから…佐伯さんのこと大切にするから…俺と付き合ってほしい。」
山口さん…声も体も震えてる…。
いつも元気で明るい山口さんがこんな風になってるなんて…私のこと真剣に思ってくれてるんだ…。
その気持ちはすごく嬉しい。
だけど、山口さんが私を好きでいてくれてる気持ちと同じように、私も真剣に支店長のことが好きなの…。
そう考えて断ろうとした瞬間…私の頭に、支店長と寺川さんがよぎった。
『1回でいいからさ、飯付き合ってあげてくれない?』
支店長は、私と山口さんのことを応援しているんだ…。
『見た目も性格もめちゃくちゃ可愛いし、仕事はできるし、優しくて芯の強い子』
支店長は、あんなに素敵な寺川さんを好きなんだ…。
もう私なんか絶対にダメじゃない。
そう考えた私は、こう答えた。
「…私で良ければ、よろしくお願いします。」
「…マジ!?…やったー!!ありがとう!」
自分の想いを諦めるために取ったこの選択が、山口さんを…そして自分自身を苦しめることになる。
つづく
by rin1119a
| 2013-11-16 19:39
| 運命の人