JYJの妄想小説ブログです。妄想小説が苦手な方は閲覧しないでください。JYJも妄想も好きな方は是非どうぞ(^^)気に入ってもらえますように(*´∀`)


by 凛

カテゴリ:プライド( 65 )

プライド エピローグ

「寺川課長、新宿支店の支店長から電話です。」
「ありがとう。繋いでください。…お疲れ様です。寺川です。」

私は、去年支店から本社に異動になった。
支店東京部という部署の課長として、東京23区にある全支店の営業を支援している。

結婚して3年と少し経つけど、こうして仕事を続けられるのは、理解のある優しい主人のおかげだ。
今日は、主人が日本の家に帰ってくる日。
いつもより気合い入れて仕事して、早く帰らなきゃ。いっぱい尽くさなきゃ。


*****

「寺川ーちょうどいいところに!」
「深田くん、お疲れ様。どうかしたの?」

深田くんも去年支店から本社に異動になり、今は人事部新卒採用グループで東日本ブロックの採用責任者を務めている。
部署は違うけど、同じビルの中で働いているからこんな風に遭遇することが時々ある。

「お前、明日時間ある?午前か午後だけでもいいから、手貸してくれ!明日会社説明会やるんだけど、学生相手に講演してくれる社員の数が足りなくてさ…。お前なら、学生受けもいいし…。頼む!」
「主人に聞いてみないと、なんとも言えないけど…お昼までなら大丈夫かも。」
「あ、旦那帰ってきてるんだ!うわ、申し訳ない…ならいいよ。他の奴探す。」
「いいよ、大丈夫。お昼までなら主人もOKしてくれると思う。主人に聞いたら、すぐに連絡するね。」

「うわ…ホントに申し訳ない…。家族3人の時間を妨害して…。」
「ううん。気にしないで。採用担当はホントに大変だね。あんまり無理しすぎないように。」
「お前もな。支店支援の方がよっぽどストレス溜まるだろ?」
「うん(笑)…あ、保育園の迎えがあるから、そろそろ行かなきゃ。お先に。」
「おつかれー。旦那とあやめちゃんによろしくー。」
「うん。」
急がなきゃ、あやめが待ってる!


*****

「ママ~。パパ…まだ?」
「もうすぐ帰ってくるよ。」
二歳の娘は大好きな幼児教育番組もそっちのけに、パパの帰りを今か今かと待ちわびている。
私も…ユチョンに早く会いたい。

ガチャ

あ、帰ってきた!
「パパー!」
ドアが開く音がした瞬間、私よりも何倍も早く娘は玄関へ走っていった。

「あやめーただいまー!会いたかったよー!」
「パパーおかえりなちゃーい!」

チュッ

ユチョンがあやめを抱っこすると、あやめはパパにキスをした。

「わぁーありがとう!パパもあやめにチューするー!」
父娘の仲睦まじい姿を見ていると、幸せを実感する。

少し離れた場所でその様子を見ていると、ユチョンが私を呼んだ。
「美桜ーそんなとこにいないで、こっち来てー。」
「うん。」
ユチョンのそばにいくと、彼は私の頭を撫でて…。
「ただいま、美桜。会いたかった。」
「おかえりなさい、ユチョン。私も会いたかった。」
私たちは熱いまなざしで見つめあい、あやめと3人でリビングに向かった。


*****

ユチョンに抱きしめられるのは、昔も今も大好きだ。
後ろから抱きしめられていると、耳元でユチョンの声や吐息が聞こえてドキドキする。

「明日ホントにごめんね。せっかくユチョンが帰ってきて、しかも休みなのに、仕事入っちゃって…。」
「いいよーお昼までだし。あやめと二人で待ってるから。」
「ありがとう。深田くんの頼みだからきいてあげたくて。」
晩御飯を食べてお風呂に入ったあと、あやめを寝かしつけて私は台所で洗い物をしている。

「…仲良いんだね。」
「うん。一番辛い時期に一緒に頑張ってたから、何でも話せるし。」

「…。」
「彼、すごく仕事できるから、良い刺激もらえるの。『私も負けてられないな!』って」
「…ふーん…」
「あ、自分の話ばっかりでごめんね。」
「…。」

ユチョン…私が自分の話ばっかりしたから怒っちゃったのかな…。
せっかく帰ってきたのに、明日仕事入れちゃったし…。

「…そんなに深田がいいの?」
「えっ???」
いきなりのユチョンの質問に、私は訳がわからず何も答えられない。
「…俺よりも深田がいいの?」
「え!なんでそうなるの!?」
「だって…深田の話してる時の美桜楽しそうだし…。」
もしかして…ユチョンは深田くんにやきもち妬いてるの??
可愛いなぁ(笑)

「深田くんは、大切な仲間だよ。」
「大切!?やっぱり深田と!」
「違うよ!なんでそんな変な方に捉えるの!大切な仲間だよ!それ以上でもそれ以下でもない!…ユチョンは特別なのに…」

「どう特別なの?」
いつもよりもさらに低音な声が耳に響いた。
「ど、どう…って…。」
「言ってくれなきゃわからない。」
そうユチョンは囁くと、私の耳・首筋にキスを落としてくる。

「ア…ユチョンは…」
「ユチョンは?」
「…私の…大切な旦那様だよ…」
「ありがとう。…じゃあ、大切な旦那様が、大切な可愛い奥さんをいっぱい愛してあげる。…3ヶ月ぶりだから…止まらないよ。」

その言葉通り、ユチョンは止まらなかった。何度も何度も私を愛した。
深田くんにやきもちを妬いたせいかな…なんだかいつもよりも激しかった。

それに…私が恥ずかしくなるような言葉をいっぱい言ってきたり、私に恥ずかしい言葉を言わせたり…。
普段はすごく優しく愛してくれるのに、今日はすごく意地悪だった。私が泣いちゃったら、いつも通りとびきり優しくしてくれたけど。
深田くんのことが気になるのかな?

少しやきもち焼きで優しい主人と可愛い娘に囲まれて、私はとても幸せ。


おわり
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by rin1119a | 2013-10-10 12:42 | プライド | Comments(5)

プライド 最終話

美桜は、俺の腕の中で泣いている。そんな美桜を、俺は何も言わずに抱きしめていた。

「ぐすん…でも…ユチョンを傷つけないようにって思ってたのに…結局傷つけた…。
ごめんなさい。連絡先変えてユチョンとの接触を絶たなきゃ、私…ユチョンから離れられないって思って…」
なんでそんなに優しいんだ…。
愛しくてたまらない。

「美桜…昔もこんなことあったよな?」
「え?」
「ソウルのホテルで美桜が泣いちゃって、俺がこんな風に抱き締めてた。」
「うん。私…あれから10年経ったのに…子供のままで恥ずかしい…。ごめんなさい。」
「謝らないで。俺、美桜が自分の不安をぶつけてくれるの嬉しかった。でも…美桜は俺に気をつかってだんだん自分の気持ちを話さなくなった。俺も話さなくなった。」

昔と同じように美桜の頭を撫でながら、話し続ける。
「美桜が俺を守りたい…って思ってくれたのと同じように、俺も美桜を守りたかった。」
「ユチョン…」
「でも…俺も美桜も勘違いしてたんだ。」
「勘違い?」
「うん。人を守ることと、辛いことを一人で抱えることとを、ごちゃ混ぜにしてたんだ。辛いことを一人で抱えたら、相手に心配かけずにすむ…て考えて…。」
「…うん。」
「でも、それが俺たちを追い詰めた。二人でいるんだから、お互い寄りそいあえばいいのに。ちゃんと話し合えばいいのに。」
誰もいない個室で、俺は華奢な体を思いっきり抱きしめた。


「あー!もうごちゃごちゃ言うの疲れた!」
「えっ?」
俺の言葉に美桜は驚き、顔を上げた。すると、俺とバッチリ目があってしまった。
なんとなく気まずくて、俺は黙り混んでしまう。

「…ユチョン?」
「美桜…過去のことはおいといて…。これからの俺たちのことを考えないか?」
「これから!?」
「うん…これからの俺たち。
まず、俺は美桜に仕事を続けてほしいと思ってる。俺は、韓国と日本行ったり来たりだから、あんまり一緒にはいれないかもしれない。でも、美桜には仕事を続けてほしい。」
「ユチョン…」
美桜の目はあっという間に涙でいっぱいになって、もうこぼれ落ちそうだ。

「それから、俺は芸能人だから美桜に嫌な思いさせるかもしれない。だけど、俺を信じて一緒に歩いてほしい。」
「ユチョン…私…」
「考えなきゃいけないこと色々あるけど、俺は美桜とずっと一緒にいたい。もう二度と離したくないんだ。だから…俺と結婚してほしい。」
俺は、ポケットに入れていた指輪を取り出すと、美桜の顔を見つめた。

「…美桜、この指輪…はめていい?」
美桜は泣きすぎで何も話せなくなっているけど、首を縦に大きく振った。
俺は指輪をはめながら言葉を紡ぐ。
「これからは、お互いちゃんと向き合っていこうな。そうじゃなきゃ、一生一緒にいるなんて無理だよ。俺は、美桜を誰よりも愛していて、美桜とずっと一緒にいたい。だから、ちゃんと向き合っていこうな。」

「ユ…ユチョン…」
美桜は俺の名前を呼んで、じっと俺の顔を見つめている。あの時…ソウルのホテルで泣いていた時と同じ目で。

「何?」
「私…ずっと…ユチョンのそばにいる。ずっとそばにいさ…アッ」

美桜の言葉を待たずに、美桜の唇を塞いだ。

小さな唇から可愛らしい吐息が漏れてくる。
耳まで真っ赤にして、恥ずかしそうにしている姿…。昔と何も変わってない。
28でこんなに可愛いなんて…。

「…ハァ…アッ…ユチョ…」
美桜は完全に俺に身を委ねている。美桜の服の中に手を入れて、胸を触ろうとした。
すると、小さな手に止められた。

「美桜…なんで止めるの?」
「だ、だって…ここお店だよ…。いくら個室だからってお店でこんな…」
美桜はイヤイヤしながら言った。
「ホントだ(笑)美桜が可愛すぎるのと、プロポーズOKしてくれたのが嬉しくてつい(笑)」
美桜の頭を撫でると、俺たちは店を出てタクシーで美桜の家に向かった。
移動する間はずっと手を繋いだままだった。


美桜の家に入った瞬間、俺は美桜を抱き上げてベッドへ連れていき、失った時間を取り戻すように何度も愛しあった。

美桜…サランヘ
ユチョン…愛してる

何度も愛の言葉を交わした。

相手を守ったり支えたりしていることじゃなくて、相手を愛している気持ち・こんなに深く愛せる人がいることにプライドを持とう。

それさえ忘れなきゃ、俺たちはずっと一緒にいれる。
お互いを愛する気持ちは疑いようがないのだから。

美桜…ずっと一緒にいような。
ユチョン…ずっと一緒にいようね。
もう二度と離れない。



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by rin1119a | 2013-10-09 23:35 | プライド | Comments(8)

プライド 第62話

いつのまにか、これは映画だということなんて忘れていた。
ユチョンの演じたキム・テファンの気持ちが手に取るようにわかる。ユチョンがユチョンじゃなくて、キム・テファンにしか見えなかった。

ユチョン自身が『テファンが僕に憑依してきたからです。』て言っていたけど、まさにそれだった。
演技の技巧面では、ベテランの共演者の方がユチョンより優れていると思う。
でも、技巧面の差などどうでもよくなるくらい、ユチョン…キム・テファンは素晴らしい存在感を放っていた。
ベテランに負けない存在感だった。

見終わった後、しばらく動けなくなるほど心揺さぶられる映画だった。


*****

試写会の後、俺は予約している店に向かった。
多分、美桜の方が先に着いている。

ガラッ

予約している個室席に案内される。
店員さんが襖を開けると、予想通り部屋の中には美桜がいた。

「待たせてごめん!」
「ううん。全然待ってないよ。お疲れ様。映画すっごく良かった!」

あ…タメ口だ!
なんか嬉しい…。

「ホント!?」
「うん!テファンの気持ちが伝わってきて泣いちゃったもん!」
「やったー!でも、それくらいの演技できたのは美桜のおかげだよ!ありがとう!」
「私は何も…あ、ユチョン座ったら?」
あ…俺ドアのそばで突っ立ったままだ(笑)
「うん(笑)」


*****

映画と俺たちの日本ツアーの話で盛り上がり、なかなか良い雰囲気だ。
ふと、窓の外を見ると、東京タワーが見える。東京タワーか…。

「美桜…東京タワー綺麗だね。」
「うん…。」
楽しく話していた雰囲気がほんの少し変わり始める。

「…覚えてる?東京タワーの前で二人で写真撮ったこと…」
「…覚えてるよ。」
あの日は、美桜の誕生日の数日前だった。
美桜の誕生日の日に韓国で仕事があって一緒にいれないのが悲しくて…。
でも、誕生日当日に美桜が俺に会いに一人で韓国に来てくれて…。

「美桜、誕生日の日に韓国まで来てくれたよな…。」
「…うん。」
「ソウルのホテルで俺が言ったこと覚えてる?」
「…覚えてる。」
自分は俺に相応しくないと言って、泣いていた美桜に俺が伝えた言葉…。

「俺の気持ちは、あの言葉を言った時のままだよ…」
「…ユチョン」
「俺の気持ちはずっと変わってない。美桜を愛してる。美桜を守りたい。…でも、俺…肝心な時に守ってやれなかった…。」
「ユチョン!?」
美桜は目を見開いた。

「藤原社長が亡くなった日の夜、美桜俺に電話かけてきてくれたよな。…それに俺は出なかったし、かけ直すこともしなかった…。」
美桜は今にも泣きそうな顔をしている。
「俺…最低だよな…。口ではカッコいいこと言ってるのに、全然何もしてなくて…。
美桜に呆れられて、別れ告げられて、拒否されるのも当たり前…」

「違う!そうじゃない!私、呆れてなんかないよ!」
俺の言葉をかき消すような涙声で、美桜は言った。俺が話している途中に口を挟むなんて、そんなこと一度もしたことがないから驚いていた。

「…美桜…あの時の美桜の気持ちも、今の美桜の気持ちも聞かせて欲しい。俺も自分の気持ちちゃんと話すから…。
今日は、そのために美桜を誘ったんだ。」
俺の言葉を聞いて涙を拭うと、美桜は言った。

「私…ユチョンがそんな風に思っちゃうのが嫌だったから、理由言わなかったの…。」
「…えっ?」
「藤原社長が亡くなった日の夜、ユチョンに電話をかけた。ユチョンの声が聞きたくて…。」
…やっぱり…俺は本当に何してたんだ…。

「…でも…ユチョンは出なかったし、かけ直してくることもなかった…。それで…私みたいなユチョンを守れない人間が、ユチョンのそばにいる資格ないって思った。」
俺のそばにいる資格ない?
なんでそうなるんだ?
俺に呆れたんじゃないの?

「『仕事で大変なユチョンを守りたい。私がユチョンを守る。ユチョンのこと大好きだから。』って私はずっと思ってた…。
でも、藤原社長のことがあって私は精神的にボロボロだった。私には、ユチョンを守る力は残ってなかった…。

私は、ユチョンを守れない。…これから私はユチョンに寄りかかってしまう。でも、そんなことしちゃいけない。ユチョンは大変なんだから、余計な負担かけちゃダメ…。
そう思った。だから…離れるしかないと思ったの…。」
そんな風に思ってたのか…。どれだけ優しいんだよ…。

「でも、こんなこと言ったら…ユチョンは優しいから、絶対に自分を責める。そんなの嫌。私の中でとどめておけば、ユチョンを傷つけずにすむ。そう思っ…ユチョン!?」
俺は、美桜の向かいから隣に移動して、美桜を抱きしめた。

細い肩
華奢な体

抱え込みすぎなんだよ…。
でも、俺がそうさせてたんだよな。ごめんな。もう、絶対にそんな想いさせない。
だから…ずっと俺のそばにいてくれ。


つづく
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by rin1119a | 2013-10-09 17:43 | プライド | Comments(4)

プライド 第61話

『素直に自分の気持ちをぶつけること。それをすれば、どんな結果になっても悔いはないし、ウジウジしない。自分に嘘ついてると、苦しくなるだけだぞ。』

深田くんの言葉が頭から離れない。
私…本当は…ユチョンが好き。ユチョンのそばにいたい。
でも、いいの?
私…ユチョンをいっぱい傷つけたのに。
ユチョンを守れなかったのに。
本当のこと言ったらもっと傷つけちゃうのに。

『…お前鈍いよな…』
深田くんの気持ちに全然気づいてなかった…。私、知らないうちに深田くんを傷つけてたんだ…。


ブーブー

あ、深田くんからメール…。

『無事帰ったみたいで安心した。店で俺が言ったことのほとんどは忘れてくれ。酔っ払いの戯れ言…てことで(笑)

でも、素直に自分の気持ちをぶつけること…ってのは忘れるな。忘れずに実践しろよ。
その結果、お前も相手も傷つくかもしれない。でも、ぶつかってできた傷よりも、ぶつからないでできた傷の方が後に残るぞ。
お前、多分ずっとその状態なんじゃないか?寺川は優しすぎるから、何でも自分一人で抱え込むけど、その癖治せ。自分が辛いだろ?

それから、過ぎたことを考えるよりこれからのことを考えた方がいい。
まあ、長々と書いたけど、とにかく頑張れ!
また、飲みにいこうな(^o^)』

深田くん…なんでそんなに優しいの?優しすぎるのは、私じゃなくて深田くんだよ…。

ここまで言ってもらって…。深田くんのこと傷つけて…。ユチョンとちゃんと向き合わなかったら…。私、深田くんに顔向けできないよ…。
怖いけど…私ちゃんとユチョンと向き合う。もう逃げない。自分に正直になる。


*****

「はぁーこれでアイツも少しは素直になれるかな…。」
寺川にメールを送り、ホテルのベッドに寝転がる。

アイツ…本当に優しいから、どうせ『深田くんのこと傷つけた…』とか『正直になって、相手のこと傷つけたらどうしよう』とか考えてるに決まってる。だから、もう1回背中押してやらないとな。

それにしても…今日俺よく我慢できたよな。
危うく「好きだ」て言いそうだった。何度手を出しそうになったことか。
アイツ昔から無防備過ぎるんだよな…。鈍いし…。自分の可愛さ自覚して、少しは警戒心持てよな。
他の男なら襲われてるぞ。

「はぁ…」
…さてと、自分を労るために一人酒するか!


*****

試写会当日

「ふぅ…」
「ユチョンさん緊張してます?」
「はい…。お客さんの反応を直接見れるからね…どんな反応がくるか緊張します。」
そういう意味の緊張もあるけど…。
美桜とちゃんとぶつかる覚悟をしたとはいえ、やっぱり緊張する。しっかりしろ、俺!

それに、俺の演技を美桜に見てもらうのも緊張する。自分では120点をあげたいくらい良い演技ができたと思う。だけど、美桜は、映画見てどう思うだろう?

「大丈夫ですよ!ユチョンさんの演技ほんとに凄かった…て他の俳優さん皆さん言ってますよ!」
「ありがとう。」
興奮気味なメイクさんにセットしてもらいながら、俺は試写会の挨拶に向けて気合いを入れ直していた。


*****

「それでは、監督と出演者の皆様に登場してもらいましょう!」
司会者のその声と共に、俺たちは拍手に包まれながら舞台に上がった。


「…続いては、キム・テファン役のパク・ユチョンさんに挨拶をお願いしましょう。パクさん、お願いします。」
その声を合図に俺は挨拶を始めた。

「皆さん、今日は会場まで来てくださって本当にありがとうございます。キム・テファン役のパク・ユチョンです。」
大きな拍手が起こっている。

「僕が演じたキム・テファンは、とても難しい役でした。
周りに流されてしまう気持ち・現実に押し潰され参っている気持ち・子供の頃の夢を捨てたくない気持ち…たくさんの気持ちを持っている人で…。でも、その気持ちをほとんど口に出さない人なんです。
その気持ちを台詞以外の方法で表現することがすごく大変でした。」

関係者席に目を向けると、美桜の姿があった。俺は美桜を見ながら、言葉を続ける。

「台詞以外で表現するには、テファンの気持ちを本当にしっかり掴まなければいけません。だから、テファンの気持ちを掴むために、僕はある人に話を聞きました。
彼女はテファンそのもので、僕は撮影の間常に彼女のことを考えて、テファンの感情を作っていました。そうしているうちに、作る必要がなくなりました。テファンが僕に憑依してきたからです。

テファンの感情を掴むきっかけを作ってくれた方・そして皆さん…見ている方の心を揺さぶるとてもパワーのある作品に仕上がりました。是非、楽しんでください。」

そう挨拶を締めた俺は、美桜を見つめた。優しい笑顔で拍手を送ってくれていた。

本当は…『大切な人にキム・テファンの感情を掴ませてもらった』て言いたかったけど…そういうことは二人になってからでいいか。

さぁ…試写会が終わったら…一世一代の勝負するか!


つづく
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by rin1119a | 2013-10-09 12:33 | プライド | Comments(4)

プライド 第60話

「あー疲れたー!」
「お疲れさまー!」

深田くんとビールで乾杯する。
「ビール美味しいね。それにしても、こんなオシャレなお店よく知ってるね。東京に住んでるのに知らなかったー。」
「ちょっと調べたからな。女の子と二人なんだから、多少は頑張らないとな。」
「もう『女の子』なんて言われる年じゃないよー(笑)それに、私相手なんだから、頑張る必要ないじゃない(笑)」

深田くんが案内してくれたお店は、カップルに人気がありそうな雰囲気のあるお店だ。他のお客さんは、ほとんどがカップルだ。
しかも、私たちの席(小さな個室)からは東京の夜景を一望できる。

「…わかってないな…。…寺川さ、海老好きだろ?ここの店に、めちゃくちゃうまそうな海老料理があるんだ。」
深田くんは、そう言いながらメニューを開いた。そこにはとても美味しそうな海老料理の写真がある。
「わぁー!美味しそう!これを食べさせてくれるために、ここのお店に連れてきてくれたんだね!深田くん、ありがとう!」
「あ、あぁ…。旨そうだろ?」

深田くんは、こういう気遣いをさらっとできる人。マメ(…だと思う)だし、いい人なのになぁ。
彼が未だに独身で、彼女すらいないのが不思議で仕方ない。


*****

話も食事もお酒も進み、私たちは二人ともほろ酔い状態になっていた。

「…お前さ、誰かいないの?」
「誰か…って付き合ってる人?」
「他に何があるんだよ(笑)」
「えっと…深田くんに紹介する人とか?」
「お前なー(笑)しかも、そんな真面目な顔で言われたら、余計悲しくなるからやめろ(笑)」
「ごめんなさい。」
「…てそんなことはどうでもいいんだ。俺の質問に答えろよ。」

ついさっきまで笑っていた深田くんが、急に真剣な表情になった。
仕事以外では絶対に見せない表情だ。…仕事で見せてた表情とも違う。何なんだろう…。
何だか…深田くんじゃないみたい…。

「で…いるの?いないの?」
「…いないけど…」
私の頭には、ユチョンの顔が浮かんでいた。
ユチョンとは今はもう何もないじゃない!
好きだけど…でも終わったの!

「けど…何?…付き合ってる奴はいないけど、好きな男はいる…ってこと?」
深田くんの問いに私は何も答えられない。


「…じゃあ、俺の話していいか?」
「え…うん…。」
「俺は、いる。」
「えっ!?そうなの!?おめでとうー!」
思いがけない報告に、私のテンションは急上昇だ。
深田くんいい人だもん。絶対に素敵な人できるって思ってたから、自分のことのように嬉しい。

「…まだ付き合ってない。気になる存在って感じ。」
「そうなんだー。でも、深田くんいい人だから、絶対にその人にも深田くんの良さわかってもらえるよ。頑張ってね!あ、今日は前祝いにする?」
私は深田くんのグラスにワインを注いだ。

「ありがとう。…めちゃくちゃ優しくて良い子なんだ。仕事も一生懸命でバリバリしてるし。しかも、美人。」
「わぁーすごく素敵な人なんだね。深田くんにピッタリ。」
「そうか?」
「うん。」
私の返事を聞くと、深田くんはグラスにあるワインを一気に飲んだ。

「でも…その子さ、昔付き合ってた彼氏のこと忘れられないみたいなんだ。」
「…そうなんだ。その人がそう言ってたの?」
「本人は否定してる。『昔の話だよー』て。でも、なんとなくわかるんだ。」
深田くんの話を聞いていたら、私も切なくなってくる…。
でも、相手の人の気持ちもわかる。昔の人のことを過去の話にするなんて、難しいよね…。

「俺…その子に幸せになってほしいんだ。一緒にいる奴が俺じゃなくてもいい。」
「深田くん…」
深田くん本当にいい人…深田くん幸せにならなきゃダメだよ…。


「…なぁ…寺川。お前、幸せになれよ。」
「え?」
いきなり自分の話に変えられたことに驚いてしまって、私はすぐに返事ができない。
「俺は、お前の元婚約者みたいな想いをするのは嫌だからな。」
「え…?」


え!?

私が反応に困っていると、深田くんが私の頭をそっと撫でた。

深田くんの手…大きいんだ。
…でもユチョンとは違う…。
ユチョンだったら、頭を撫でてくれるだけですごく安心した…。

「はぁー…お前鈍いよな…。ひとつ良いこと教えてやる。」
深田くんは、私の頭から手を離すと、大きなため息をついて言った。
「…良いこと?」
「素直に自分の気持ちをぶつけること。それをすれば、どんな結果になっても悔いはないし、ウジウジしない。自分に嘘ついてると、苦しくなるだけだぞ。」
「…うん。」

「じゃあ…俺はホテルに戻る。送りたいけど、今日は自信がないからやめとく。気をつけて帰れよ。帰ったらメールしろよ。」
「…う、うん。」
「実は、年末に朝まで飲んだ時も結構ヤバかったしな…。」
「え…深田くん…」
「じゃあな!俺が東京に来るか、お前が愛知に来た時はまた会おうな!」

いつもの底抜けに明るい笑顔とは少し違う笑顔で、深田くんはお店を出ていった。

一人になった私の頭の中では、『深田くんの好きな人って…私?まさか…』という驚き・『自分に嘘ついてると、苦しくなるだけだぞ』という深田くんの言葉たちがグルグルと駆け巡っていた。

そして、今自分に嘘ついてない?…という自問自答を繰り返していた。


つづく
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by rin1119a | 2013-10-08 19:10 | プライド | Comments(6)

プライド 第59話

銀行の話をユチョンにした日以来、私はユチョンと顔を合わせていない。

ユチョンの出演する映画の撮影が始まり、JYJの日本ツアーの練習も本格的になり忙しくなったため、ユチョンはほぼ日本支社に顔を出さなくなったからだ。
シン社長が言うには、映画の撮影期間は1ヶ月半で、公開は9月を予定しているらしい。


*****


2015年8月下旬

「失礼します。」
「寺川さん、待ってたよ。昨日はいきなりだったのに対応してくれてありがとう。君も他の仕事で忙しいのに悪かったね。」
「いえ、いつでも対応できますから、遠慮なくおっしゃってください。」
「ありがとう。」
今日もいつも通り、シン社長を訪問している。昨日頼まれた見積書をより詳しく説明するためだ。

「あ…そうそう!忘れるところだったよ!これ、ユチョンの映画の試写会のチケット。関係者席だから。」
「え…」
「ユチョンがさ、すごく良い演技できたって喜んでるんだ。監督も共演者もみんなユチョンの演技を絶賛してる。そんな演技をできたのは寺川さんのおかげだから、絶対に寺川さんに見てほしい…って。」
「そうなんですか…ではお言葉に甘えて…。」
私は試写会のチケットを受け取った。

「あ、試写会終わった後、時間ある?」
スケジュールを確認すると、その日は空いている。
「はい。」
「良かったー。ユチョンが『君と食事したい』って言ってるんだ。良い演技をできたお礼に。」
「そんな…私は特に何も…」
「絶対に君のおかげなの!とにかくユチョンと食事して!これは社長命令だからね!」
シン社長の剣幕に押された私は、渋々ユチョンからの食事の誘いを受け入れたのだった。
まあ…1度だけなら…。


*****

プルルー


「もしもし?」
『ユチョン、寺川さんからOKもらったぞ。』
「ヒョン、ありがとう!」
『もっと早く寺川さんとのこと教えてくれたら、色々協力したのに…。水くさいぞ!』
「ハハッなんか恥ずかしくてさ(笑)」

俺は、ヒョン経由で美桜を試写会と食事に誘った。試写会よりも食事の方がメインだけど。
ヒョンは前々から『俺が美桜を気に入ってるんじゃないか…』と思っていたらしく、美桜を誘うのを頼んだら根掘り葉掘りと聞かれてしまった。

『とにかく頑張れよ!何かできることあれば何でもするからな!』
「ありがとう。頑張るよ!」

緊張する…
でも、俺は美桜が大事だ。離したくない。だから、できることは全部する。何もしないで終わるのは嫌だ。
思いっきりぶつかる。


*****

もう明後日だね…。
試写会は楽しみ。ユチョンの努力の結果を早くこの目で見たい。

その後の食事…何だか緊張する…。
…ううん。大丈夫だよね、特に意味はないよね。ただのお礼の気持ちだけだよ。
私、あんなにユチョンを拒否しておいて、何を意識してるの?何もないよ!


「おーい!寺川ー!」
え、この声!
仕事を終えて支店から出てきた私の耳に、聞き覚えのある声が入ってきた。

「深田くん!どうしたの!?なんで東京にいるの!?」
「お前驚きすぎ(笑)いやさ、新卒採用の一次面接に駆り出されてさー。」
うちの銀行は、受けにくる学生さんは多いのに、一次面接から最終までずっと個人面接だから面接官の数が足りない。
だから、一次と二次は採用担当だけじゃなくて、私たちのような現場の人間も面接官として学生さんとお話する。

「え、でも深田くん愛知勤務なんだから、西日本ブロックじゃない?大阪の方が近いでしょ?」
「…だと思うだろ?俺なんか東日本で勤務してたことすらないのに(笑)でも、どうしても東日本ブロックの人手が足りないから来い…て。今の東日本ブロックの新卒採用の責任者が、博多の時の支店長なんだよ。世話になった人の頼みだから断れなくてさ。」
「そうなんだ。」
そういえば、私も、去年なぜか西日本ブロックの一次面接の面接官を頼まれたなぁ。

「3日連続面接でヘトヘトー。寺川、この後何もないよな!」
「何もないですよ(笑)」
「よっしゃー!付き合え!飲むぞ!」
「はいはい(笑)」
「なんだ?ノリ悪いな。」
「悪くないよ(笑)予想通りの展開だからだよ(笑)」

私は深田くんに引き連れられ、飲みに行くことになった。


つづく
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by rin1119a | 2013-10-08 11:41 | プライド | Comments(4)

プライド 第58話

ガチャ

「ユチョンーおかえりー!」
「ジェジュンヒョン!?ジュンスも!?どうしたの!?」
美桜から話を聞いて、自己嫌悪に陥った俺は一人むなしく帰宅した。
帰宅すると、何故か家の中にジェジュンヒョンとジュンスがいた。

「二人ともどうしたの?それより、どうやって入ったの?俺、戸締りしてたよね…」
…うん。俺は絶対にちゃんと戸締りした。
ヒョンもジュンスも俺の家の鍵を持っていない。

「明後日クランクインでしょ?ユチョンが良い仕事できるように、気合いいれてあげようと思ってさ。」
ジュンスがニコニコしながらこたえた。
「あ、ありがとう。」
「俺が腕によりをかけて作った料理で気合い入れろよ。お酒もいっぱいあるし。」
「う、うん。ありがとう、ヒョン。」
いや…それは嬉しいんだけど、一体どうやって入ったんだ?
…またベランダからか?そうとしか考えられない。危ないからやめろって言ったのに…。
でも…ジュンスはともかく、ヒョンがベランダから入るなんて想像つかないんだけど…。

「ユチョンー難しい顔してないで、こっち来て食べようよー。チゲ美味しいよ。」
「ジュンス!なんでユチョンより先に食べるの!?今日の主役はユチョンだよ!」
「えー!だって美味しそうだったんだもん!ユチョン早く食べなよー。」
「う、うん。」
ジュンスに促された俺は、色々疑問を持ちつつも料理を食べ始めたのだった。


*****

「飲めないくせに、調子乗って飲みすぎなんだよー(笑)テキーラなんかダメだって言ったのに…」
完全に酔いつぶれて寝てしまったジュンスにタオルケットをかけながら、ヒョンは呟いた。

ジュンスは飲めないくせに、飲み会の雰囲気と酔うのが大好きでひたすら飲んでしまう。
ひたすら…と言っても、3杯も飲まないうちに寝ちゃうけど(笑)

「ユチョン…良い仕事が来て本当に良かったな!絶対に良い映画にしろよ。」
「もちろん。」
「あーあ、ユチョンは仕事もプライベートも順調で羨ましいなー。」
「…プライベートは全然だよ…。」
「え?だって、美桜ちゃんにまた会えたでしょ?あとはさ、アタックあるのみじゃん。映画と美桜ちゃんへのアタック成功を祈って乾杯する?」

ヒョンは、知らないからそんなおめでたいことを言えるんだ…。
アタック?そんな資格俺にはないよ…。美桜だって俺のことなんか嫌に決まってる。
口ではカッコいいこと言ってるのに、実際は何もしない。美桜を支えられない俺なんか…。

「ユチョン!?どうした!?美桜ちゃんと何かあったの!?」
「いや…何でも…」
「何でもないのに泣くわけないだろ!」
え…
ヒョンに言われて初めて気づいた。自分の目から涙が流れていることに。

「ユチョン?何があった?俺でよかったら話聞くよ?」
「…ヒョン…」
俺は、美桜が別れを切り出した理由・美桜がどれだけ辛い想いをしていたかをヒョンに話した。


*****

「…なるほどね。美桜ちゃん本当によく頑張ってるな。芯は強そう…とは思ってたけど、俺の想像以上だな。」
本当にそうだ。美桜はめちゃくちゃ頑張ってるし、芯が強い。俺は、何もしてやれなかった…。

「それで?ユチョンはなんでそんなにウジウジしてるの?」
「え…それは…」
俺は、ヒョンの言葉に驚いて、言葉を返せない。
なんで…って当たり前だよ。俺は美桜を支えられない。美桜のそばにいる資格なんかない。

「留守電に対応しなかったから…肝心な時に守れなかったから、美桜ちゃんに嫌われた。そんな自分に美桜ちゃんのそばにいる資格ない…ってこと?」
「…わかってるんだったら聞くなよ…。」
俺は暗いトーンで返した。

「気持ちはわかるよ。俺もユチョンの立場ならそんな風に考えちゃうと思う。…でもさ、それって全部ユチョンの想像じゃないの?」
「…えっ?」
俺はヒョンの言いたいことがわからず、何も答えられない。
「美桜ちゃんに直接そう言われたの?留守電に対応しなかったから嫌いになったとか、ユチョンのこと嫌いだとかさ。」
「…そうは言われてないけど…」
直接言われてないけど、明らかにそう思ってるだろ…。

「言われてもないことを想像してウジウジして、美桜ちゃんを諦めようとしてるの?それさ、おかしくない?」
「だって…どう考えても…」
「だからさ!美桜ちゃんに直接聞いてないのに、美桜ちゃんの気持ちがわかるわけないだろ!」
ヒョンが珍しく大声を出したことに、俺は完全に驚いていた。

「美桜ちゃんとの最後の電話のこと思い返してみたら?嫌いだなんて…呆れたなんて…言ってた?絶対に言ってないと思うけど?俺は全然知らないから、自分でちゃんと思い返すんだ。」

『違う!そうじゃない!好きよ!大好きだよ!でも…』
大好き…美桜そう言ってた…。
その言葉に嘘はないはず。
別れの電話でわざわざ『大好き』なんて普通言わない。本当に気持ちがなかったら絶対に言わない…。

「…言ってない…『大好きだよ』って言ってた…」
「だろ?…ユチョンさ、ちゃんと美桜ちゃんと向き合ってた?ユチョンだけじゃなくて美桜ちゃんも。二人とも相手を気づかいすぎて、自分の気持ちちゃんと相手に伝えてないんじゃない?」
そう言われてみれば…。
昔は、美桜は自分の不安を俺にぶつけてくれてたし、俺も自分の気持ちをちゃんと話してた。
でも…俺が忙しくなってきたあたりから、だんだんお互いの気持ちを話さなくなった。

きっとこう思ってるだろう。
これを言うと心配かけるだけだから、言わないでおこう。

お互いそんな風に考えて、自分の気持ちを封じ込めるようになってしまった…。
相手が大変だから、自分のことは自分で頑張ろう…そう決めて一人で思い詰めてた。
自分が相手を支えてる・守ってるというプライドが邪魔をしていたんだ。

「なぁ、ユチョン…俺はユチョンと美桜ちゃんの二人がすごく好きなんだ。美桜ちゃんと会ってから、ユチョン本当に明るくなった。だから、うまくいってほしい。仮にダメだとしても、今のその状態で諦めるなよ…。」
「ヒョン…」

「自分の気持ちちゃんとぶつけろよ…。美桜ちゃんの気持ちちゃんと聞こうよ…。俺からの頼みだよ。」
「…ヒョン…ありがとう。ぶつかり合うよ、俺。」
「うん。そうと決まれば、飲もう!」
「うん!」

ヒョン…本当にありがとう。
俺、ちゃんと美桜と話し合う。


つづく
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by rin1119a | 2013-10-07 20:29 | プライド | Comments(2)

プライド 第57話

ガチャ。

仕事を終えて、私は帰宅した。
帰宅するとすぐに冷蔵庫から缶ビールを取ると、ソファーに腰かけた。

ゴク

ビールを飲みながら、ユチョンのことを考える。

ユチョン…気づいちゃったのかな…。
あまり話さない方がいいとは思ったけど、ユチョンの仕事に役立てるなら…という気持ちに負けて話してしまった。

でも、5年近くも前の留守電なんていちいち覚えてないよね…。
うん。大丈夫。

藤原社長が亡くなった日の夜、私は衝動的にユチョンに電話をかけた。
話を聞いてほしいわけじゃなかった。ただ、ユチョンの声を聞きたかった。ユチョンが美桜…て呼ぶ声を聞きたかった。
聞いて安心したかった。

だけど…ユチョンは電話に出なかったし、かけ直してくることもなかった。
彼を責めているわけじゃない。
ユチョンは大変な時期だから仕方ない。

でも、あの日気づかされた。
ユチョンを守ると意気込んでいたけれど、人を守るのは自分に余裕がなきゃできないこと。
あの時の私は、人を守るどころじゃなかった。自分が壊れないようにするのが精一杯だった。
正直、私は人に寄りかかりたかった。
人を殺めておいて、誰かに寄りかかりたいだの、自分が壊れたくないなんて、図々しいにもほどがあるけれど。
そんな自分にも嫌気がさしていた。


ユチョンに寄りかかることは当然できない。
私はユチョンを支えるべき立場であって、大変な彼に余計な負担をかけちゃいけない。なのに、私はもう彼を支えることなんてできなくなっていた。
そうなったら、離れるしかない。
だから、私は自分から別れを切り出して、連絡先も変えたのだ。

いきなり別れを告げて、連絡先まで変えて…。
ユチョンをすごく傷つけたのはわかってる。でも、本当のことを言えば、もっと傷つける。
ユチョンは、絶対に自分を責める。そんなの絶対にダメだから。


ユチョンと別れた後、私は仕事に没頭した。彼を忘れるため…というのもあったけど、一番は償いのため。

『君が銀行の体制を変えてくれ!俺はずっと見守っている。』
藤原社長からの言葉を、私は絶対に忘れない。

社長も奥様も私を一切責めなかった。
私のせいで倒産して、私のせいで藤原社長は亡くなったのに。私は罵られて当たり前なのに。

辞めようと思っていた。でも、藤原社長の手紙を読んで思った。

藤原社長の死を絶対に忘れないこと。
お客様のことを第一に考えて仕事をすること。
結果を出して上に行くこと。

それが、私に良くしてくださった藤原社長への一番の供養になる。
だから、絶対に辞めない。お客様のことを最優先にしながら、誰よりも良い営業成績をとる。
成績さえ取っていれば、誰からも何も言われない。成績を取っていれば、上に行ける。

そう心に決めた私は、仕事に邁進した。
誰よりも勉強した。誰よりも多くのお客様と名刺を交換した。誰よりも多くの電話をかけた。
その結果、成績優秀者のみが参加できるアメリカ研修に呼ばれたり、営業成績全国3位を取れた。

そんな実績が評価されて、去年からは東京支店に配属された。
東京支店は、うちの銀行で一番営業成績の良い支店で、他の銀行が多数ひしめく激戦区にある。だから、高い実績をあげている者か期待のできる若手ばかりが集められているのだ。
そして、去年は営業成績全国1位を取れた。
もちろん、周囲の方に恵まれているからだけど。

ユチョンのことはずっと忘れていなかった。ずっと好きなまま。
自分から別れを切り出して連絡先も変えたくせに、勝手な話だけど。
ユチョンも同じ気持ちなのは嬉しい…。でも…彼を傷つけた私に、またユチョンの胸に飛び込む資格なんかない。

どうか別れを切り出した理由にユチョンが気づいていませんように…。
気づいたら…もっと傷つく。
私の中だけでとどめておけば済む話なんだから…。

私はそんなことを考えながら、一人ビールを飲んでいた。


つづく
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by rin1119a | 2013-10-07 17:15 | プライド | Comments(4)

プライド 第56話

「亡くなった…」
「うん…倒産を苦にしての自殺だった…」

「私はね、頑張ってる人の支えになりたくて、銀行員になろうと思った。お金って何をするにも必要なものでしょ?だから、銀行でなら、たくさんの人を支えることができると思った。」
優しい美桜らしい考えだな。

「でも、実際は支えるどころか、首を絞めてるだけだった。私は藤原社長に何もできなかったし、それどころか私のせいで藤原社長を死なせた…。」
「違う!美桜は一生懸命頑張ってたよ!」
話を聞くかぎり、美桜は絶対に悪くない。悪いのは、そんなプレッシャーを与えていた支店長だろ…。

「ありがとう…。でも、藤原社長が亡くなってから、私はこの仕事を続ける自信がなくなった。お金がなくなると、人は死を選ぶ…そんな恐ろしい力を秘めたものを売ることが怖い。人の人生を左右するものを売ることが本当に怖くなったの。」
「…うん。」
「抜け殻みたいになった私に、藤原社長の奥様が会いにきたの。」
社長の奥さんが…。

「奥様は、私に手紙を渡してくれたの。藤原社長が私に宛てたものだった…。」

「その手紙には、私を気遣う言葉がたくさん書かれてあった。
『うちの会社が倒産したのは君のせいじゃない。俺が買いたくて買ったんだから気にするな。』て…。
手紙の最後には、『君はたくさんの可能性を秘めている。俺がこんなことになったからといって、絶対に仕事を辞めるな。君のような真摯で優しい人は、絶対に銀行に必要だ。頑張れ!頑張って上に行きなさい!君が銀行の体制を変えてくれ!俺はずっと見守っている。』って…。」
俺は何も言えなかった。何も思いつかなかったし、何も言わない方がいいと思った。

「そんなこと言われたら、辞めたくても辞められない。私、その手紙を読んだ日に決めたの。銀行の人間からいくら後ろ指を指されても、私はお客様のことを第一に考えて仕事をする。もし、お客様がお金にしか見えなくなったら…私はこの仕事を辞める。」

「嫌なことは山ほどあるけど、私はこの仕事に誇りをもってる。世間一般のイメージよりもずっと泥臭い仕事だし、汚い部分を目にすることもいっぱいある。でも、私はお客様目線・お金の恐ろしさを絶対に忘れずにやっていく。それが私のポリシー。」

鳥肌が立つというのは、こういう時のための言葉だな…。
強くて、優しくて…すごい人だ。
そんな辛い目に合っても、立ち上がって…。

…ん?ちょっと待て…藤原社長が亡くなったのは入社2年目…。
2年目…俺たちが別れた年…。

「…ユチョン?大丈夫?」
「大丈夫だよ。ありがとう。貴重な話聞かせてくれて。演技に絶対に役立てるよ!」
「役に立てるといいんだけど…。」
「絶対に役に立つよ!本当にありがとう!
…なあ、美桜…。藤原社長が亡くなったのって、2年目のいつ?」

「え…2年目の9月だけど…。」
9月…俺たちが別れたのは10月だ。
10月に美桜から電話がかかってきて…。いや、その前に何かあったような…思い出せ俺!


『もしもし?ユチョン?…いきなりごめんね。少し声が聞きたくなっただけだから…気にしないで。じゃあね。』

あの留守電…。
2010年の9月…俺たちが契約解除された日の夜に、美桜から留守電が入ってた。
美桜はいつも俺のことを気遣ってくれてたから、何の用件もないのに自分から電話をかけてくることなんてなかった。俺は少しそれを寂しく思っていて…。
そんな美桜が電話をかけてきた。留守電にメッセージを残した…。
おかしいと思わなきゃいけなかった。何かあったって気づかなきゃいけなかった。
あの留守電は…藤原社長が亡くなって精神的にボロボロになった美桜からのSOSだったんだ…。あの留守電の日に、藤原社長は亡くなったんだ…。


俺は何やってたんだ?
もっと俺を頼ってほしいとか、辛い時はお互い支えあえばいいとか…。そんなカッコつけたことを美桜に言っておいて、美桜からのSOSに何の対応もしてない…。

美桜は俺に頼ってくれてたのに。
俺にSOS出してくれてたのに。
支えるどころか、SOSだということに気づいてもいなかった。

美桜に別れを告げられて、拒否されて当たり前だ。
俺は、美桜のSOSを無視した…。

『お互い色々大変なの気にしてるの?それなら、大変な時だからこそお互い支えあえばいい。美桜、もっと俺に頼ってよ。』
別れの日の電話で俺が言ったこの言葉を、美桜はどんな気持ちで聞いていただろう。

自分のことばかりで美桜のことをちゃんと見てなかったのに、頼りにしてくれなくて寂しいだなんてどうかしてる。
俺…最低だよ…。
俺は、一体何してたんだ!

つづく
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by rin1119a | 2013-10-06 19:26 | プライド | Comments(4)

プライド 第55話

寿司を二人で無言で食べる。
空気重いな…。

「…あの…どういう話を聞きたいですか?いくらでも話すことはありますが、パクさんの聞きたい話をしますので。」
またパクさんだ…。

「ねぇ…今俺たちしかいないんだし、その呼び方とその喋り方やめない?」
「え…」
「あ、銀行の話って堅苦しそうだから、話し方だけでもフランクにしてほしいな…て思って(笑)今だけでもお願い。」

美桜はほんの少し考える様子を見せると、頷いた。
「…う、うん…。」
よし、「はい」じゃなくなった。
「そうそう。じゃあ、入社してから今までどんな仕事してきたの?」

「私は、3年目の1年間以外は入社してからずっと法人営業をしてるの。法人…企業が私のお客様。企業の社長に、証券や保険や投資信託を買っていただいたり、融資…お金を貸すのが仕事。」
「へ、へぇ…」
なんか難しいな…。

「…ねえ、ユチョンの役ってどんな役なの?その役の仕事の話をしたら参考になるかな…て思うんだけど。」
「あぁ…中小企業相手に営業してる…って設定だよ。」
「じゃあ、ユチョンの役に立つ話をできそうね。良かった。」
美桜はホッとしたような笑みを浮かべた。

あ…笑った…。
俺の前ではいつも難しそうな顔してるのに、初めて笑ってくれた。
笑った顔昔と全然変わってない…。
しかも、ユチョン…て呼んでくれてる。

「どうしよっか…私の一日の流れを話したらいいのかな…。」
「うん。まずは一日の流れからお願い。」


*****

「…まあそんな感じだよ。参考になるといいんだけど。」
俺は、銀行員のあまりのハードさに驚いていた。
そんなハードな仕事なのに、辛くないのかな…。

「ありがとう。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いい?」
「うん、もちろん。」
「銀行員の仕事って楽しい?」
俺の質問を聞いて、美桜はにこりと微笑んだ。

「辛いことの方が多いよ(笑)私の場合は、営業だからプレッシャーは大きいし。正直、2年目ぐらいまでは毎日辞めたいって思ってた(笑)」
2年目ぐらいまでは…俺と付き合ってた頃…。
やっぱりあの頃辛かったんだ…。

「でも、別に勉強とか労働時間の長さが辛いわけじゃないよ。」
「そうなの?」
「うん。辛いのは…会社の利益のために、お客様を犠牲にしてしまう場合があること…。」
「あ…それ脚本にすごくよく出てくる話だ。どういう意味?俺の役もさ、『お客様の利益にならない商品ばかり売りつけているだけの現実に嫌気がさしている』って設定なんだけど、あんまりイメージできなくて困ってるんだ…。」

美桜はしばらく考え込むと…。
「…わかった。私の忘れられないお客様の話をするね。多分…ユチョンの演技に役立つと思うから…。」
「ありがとう!」
「…私は、1年目~2年目まで大阪中央支店にいたの。そこのお客様はみなさんとても良い方で、新人で未熟な私に色んなことを教えてくれた。…そんなお客様の中でも特に私に良くしてくれた方が、藤原さんっていう人。小さな会社の社長。」

「私がいた大阪中央支店の支店長は、すごく高いノルマを要求してくる人で、達成できてない人は罵倒するの。私も、毎日のように罵倒された。『女なんだから体使って契約取れ!』て怒鳴られることなんか日常茶飯事だった。」
そんな大変な目に合ってたんだ…。全然知らなかった…。
美桜はいつも俺を心配するばかりで、自分の話なんて全然しなかった。

「私たち銀行員が売っている商品って、お客様に損をさせる可能性があるものばかりなの。それに、お客様の経営状態に合った商品を、合った金額買っていただく…てことに気をつけなきゃ、ただ損させるだけになってしまう。でも、その時の支店長は『客を殺してでも売ればいいんだ!』っていう考えの人だった。」
その支店長…人間として終わってる…。
でも、映画の登場人物にそんな奴いたな…。現実にもいるんだ…。

「まあでも、1年目はなんとかうまくいったの。お客様と指導してくれた先輩のおかげで、新人賞を頂けたし。」
新人賞…昔言ってたな。
二人でお祝いしたもんな。

「でも…その新人賞と2年目になったことが原因で、2年目から私のノルマは達成不可能なくらいの高さになった。」
2年目…美桜がそんな辛かったのに、俺は何にもしてやれてなかった…。

「そのノルマを達成させるには、その時の私のお得意様だけでは絶対に無理だった。…買っていただくだけなら可能だけど、お客様を損させてしまうから…。
だから、私は今までうちの銀行と取引をしたことのない企業を開拓するために、毎日走り回ってた。」

「でも…よく知らない人から商品を買うなんて怖いでしょ?だから、話を聞いてくれるお客様は確実に増えたんだけど、商品を買ってくれるまでいくのは時間がかかる。」
なんかあまりに辛すぎて、俺は多分まともに相槌ひとつ打てていない。

「そうなると、ノルマ達成にはつながらないでしょ?まだ商品買ってもらってないから。で、支店長から罵倒されるわけ。」
そんな一生懸命頑張ってるのに罵倒されるなんて…精神的におかしくなるだろ…。

「そんな私を心配して、藤原社長…さっき話した私を可愛がってくれた方は、色々な商品をかなりたくさん買ってくれた。…ハッキリ言って、藤原社長の会社にとっては損失にしかならないくらいの量を…。私は藤原社長に『無理して買わないでください。ノルマは大丈夫ですから。』て言ってた。でも…藤原社長は私を心配して買い続けた…。」

「私も、正直支店長からの罵倒で精神的に落ち込んでいたから、だんだん何の疑問ももたずに藤原社長に商品を買ってもらうようになってた…。」
美桜の声にだんだん悲しそうなトーンに変わっていく。

「そしたら…ある日…藤原社長の会社が倒産したの。」
「えっ!?倒産!?」
思ってもみない話に俺は驚いた。

「藤原社長の会社が倒産したのは、身の丈に合わない投資をして損をしていたのが原因のうちのひとつだった…。その『身の丈に合わない投資』をさせていたのが私。 」

「しかも、散々商品を買ってもらっておきながら、倒産した藤原社長の会社を助けることができなかった…。自分でも本当に最低だと思う。」
美桜の目には涙が浮かんでいる。その涙をこらえて美桜は言った。

「私は藤原社長のことを気にしながらも、自分の仕事をしていた。そんな私にある日電話がかかってきたの。」
「電話?」
「うん。いつも通りお客様を訪問しようとしたら、同期から電話がかかってきた…。」

美桜は黙りこんでしまった。
「…どんな電話だったの?」
俺はおそるおそる尋ねた。
「その電話は…」

「藤原社長が亡くなったことを知らせる電話だった…」

亡くなった…嘘だろ…。


つづく
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by rin1119a | 2013-10-06 17:46 | プライド | Comments(4)