JYJの妄想小説ブログです。妄想小説が苦手な方は閲覧しないでください。JYJも妄想も好きな方は是非どうぞ(^^)気に入ってもらえますように(*´∀`)


by 凛

カテゴリ:運命の人( 30 )

運命の人 エピローグ

「もうそろそろかな?」

私は、春から別の支店に異動になり、彼とはなかなか会えなくなった。
支店長を務める彼は多忙だから、私たちが会う頻度は少なめだ。

会う場所はだいたい彼の部屋。
合鍵で入って、私はご飯の支度をして彼の帰りを待つ。


ガチャッ

帰ってきた!

「茉莉子、ただいま!遅くなってごめん!」
「おかえりなさい。お疲れさまでした。ごはんできてるけど、すぐ食べますか?」
「あぁ。ありがとう。」

付き合い始めて半年が経った。
彼は、本当に優しい。
私の話はどんな話でも聴いてくれるし、忙しいのに連絡は欠かさずくれる。
忙しくてどうしても連絡を取る時間がない時は、事前に必ず伝えてくれる。

わかりやすい愛情表現はあまりしないけど、とても私を大切にしてくれてるのがわかる。
ずっと…彼と一緒にいたいな。

「旨い!」
「やったー!支店長に喜んでもらえて嬉しいです!」
「茉莉子…いいかげん『支店長』はやめろよ。あと、敬語も。」
「だって…『支店長』で慣れてるし…たまにタメ口で話してますよ。」
「今、タメ口じゃないだろ。…茉莉子、念のため聞くけど、俺のフルネーム知ってるよな?」
「当たり前じゃないですか!」
「じゃあ、言ってみて。俺のフルネーム。」
「…深田慎二さんです。」
「うん。じゃあ、名前だけで言ってみて。」
「えー支店長ー…」
「だから、『支店長』はやめろ!…自分の旦那を『支店長』って呼ぶ嫁がどこにいるんだよ…」

えっ!?旦那!?嫁!?
え?え?え?
私の頭の中で、はてなマークと旦那と嫁がグルグル回っている。

そんな私をよそに、彼は鞄の中から小さな箱を取り出して、私に差し出した。

「それ、開けて。」
「は、はい………あっ…」
指輪…まさか…
「…俺と結婚してください。」

返事はひとつしかない。
でも…感激で言葉が出ない。
「はい。」
「…ありがとう。…そういうわけだから、支店長はやめろよ!」

私がコクンと頷くと、彼は優しく微笑んでこう言った。
「茉莉子…一回しか言わないからな…。」
「はい…。」
「…愛してる。」
「私も……支店…慎二さんを愛してます。」

「今、支店長って言いかけただろ(笑)」
「だって、『支店長』も『慎二さん』も『し』から始まるから…」
「…俺…副支店長してる時に茉莉子と出会いたかった…」

私が彼を『慎二さん』とさらっと呼べる日は、いつくるのだろう。
それはわからないけど…私がずっと彼と一緒にいるのは確実だ。


おわり
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by rin1119a | 2013-12-12 12:52 | 運命の人 | Comments(12)

運命の人 最終話

日曜日の昼下がり、私は山口さんとカフェでお茶をしていた。
もちろん…別れ話をするために会っている。
いざとなると、なかなか切り出しにくい。

もう1時間くらい、無難な話をし続けている。
いいかげん、話さないと!
私がズルズル引き伸ばしてるせいで、山口さんは傷ついている。真剣に私を思ってくれているのに、傷つけてばかりだ。
許してもらえるかはわからないけど、きちんと謝って、自分の気持ち伝えよう。

そう考えると、私は自然と深呼吸をしていた。
「…今から…本題だな…いいよ。覚悟はできてるから。」
えっ…山口さん…
「………ごめんなさい…本当にごめんなさい。私、もう…山口さんと付き合えません。…他に…好きな人がいるんです…」
私は泣きそうになるのを必死にこらえる。私に泣く資格なんかない。泣きたいのは、散々私に傷つけられた彼の方なのだから。

「…うん。付き合えないのは、この前聞いた。…他に好きな奴がいるのは、結構前から薄々気づいてた。」
嘘でしょ…気づいてたなんて…
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
もう私は『ごめんなさい』しか出てこない。
「なんで茉莉子が謝るの?悪いのは俺なのに。俺こそ、本当にごめん。」

えっ?なんで?なんで山口さんが謝るの?

「俺さ…多分一目惚れだったんだ。初めて茉莉子がうちの支店に出勤した日…不安そうにキョロキョロしてる姿を見てさ…あぁ…俺が守ってやらなきゃな…って思った。」

あ…初めて支店に出勤した日…不安で不安でたまらなかった。
駅前にある大型店舗で人も多いから、他の人たちとうまくいくのか…。
仕事はできるようになるのか…。
不安しかなかった。

でも…
『おはよう!新人だよね?俺、3年目の山口!わからないことがあったら、気軽に聞いてくれよ!よろしくな!』
山口さんが一番最初に私に話しかけてきてくれた。
明るい笑顔と頼もしい雰囲気に、すごくホッとしたの。

「なんかさ…気がついたら茉莉子のこと目で追うようになっててさ。連絡先教えてもらった時も、デートOKしてもらった時も、告白OKしてもらった時も…本当に嬉しかった。でも…俺、茉莉子が好きで大切にしたかったのに、自分の気持ちしか考えてなくて、茉莉子を傷つけてた。」
そんな…山口さんは、自分の気持ちを正直に私に言ってくれていただけなのに…。

「…茉莉子…支店長のこと好きだろ?」
「えっ!?」
「驚くなよ(笑)あの日、茉莉子があんなむきになって支店長のこと庇ってたのを見て気づかないなら、ただのバカだろ(笑)俺、さすがにそこまでバカじゃないし(笑)」
山口さんは、笑ってそう言った。笑って悲しさや悔しさをごまかしてる…。
話せば話すほど、彼の優しさ・真摯な気持ちが伝わってくる。自分のしたことの重大さが身に沁みる。

「ごめんな…多分さ…茉莉子の好きな奴が支店長じゃなかったら、俺こんなに茉莉子を縛りつけることしなかったと思う。」
「え?」
「だってさー支店長良い男過ぎるだろ。あの人に敵う男がいたら、顔拝んでみたい(笑)
…俺、本当に支店長のこと尊敬してるんだ。経験が違いすぎるのはあるけど、仕事じゃ足元にも及ばない。なのにさ…仕事以外…茉莉子のことでまで負けてたら、俺惨めすぎるだろ(笑)?」
どうしよう…私…今にも泣きそう…。

「あ…また俺茉莉子の話を聞かずに、自分のことばかり喋ってたな。ごめん…茉莉子の思ってること…正直に話して。」
「…山口さん…私…山口さんの気持ちすごくすごく嬉しいんです。…山口さんは優しくて面白くて誠実で…一緒にいると楽しいです。」
「ありがとう。嬉しいよ。でも、俺のこと美化しすぎ(笑)」
「美化なんかしてません。本当のことです。…でも…」
「でも?」

「…私が男性として好きなのは…支店長なんです…だから…山口さんとは付き合えません…」
「うん。ありがとう。正直に言ってくれて。そこまでハッキリ言われたら、諦めるしかないな。」
山口さんは、いつもの明るい笑顔で言った。

「ごめんなさい…」
「もう謝るの止めよう。俺ももう謝らないから。…今までありがとう。ちゃんと…支店長に気持ち伝えろよ。…じゃあ、俺は先に出る。」
「山口さん…私こそ今までありがとうございました。」
「あぁ。明日から、先輩後輩としてよろしくな。」
「はい。」

山口さんが笑顔でお店を出ていった後、一気に涙が溢れてきた。
たくさんの話し声が飛び交う明るい店内で、私は声を押し殺して泣いた。


*****

佐伯さんと山口が別々に出勤してくるようになった。
噂好きの社員たちは『別れたの?』と噂している。

別れたのか、周囲からの目が気になるようになったのか…どっちかはわからない。
俺と山口は、あの日以来1度も佐伯さんの話をしていないからだ。
気にはなるが…どっちにしろ…俺がするべきことは1つだけだ。

俺は、佐伯さんのそばにそっと近づくと、仕事用の資料と一緒に彼女にメモを渡した。
『今夜、cherryに来てほしい』

そう書かれたメモに気づいた彼女は、目を見開いた。
「大丈夫?」
俺が唇の動きだけでそう伝えると、彼女は小さく頷いた。


*****

チリン

扉の鈴が来客を告げる。

私は先にcherryに来て、奥の席で支店長を待っていた。
いきなりの誘いにドキドキだ。
偶然ここで会うことはあったけれども、約束して会うなんて初めて。

「ごめん。待ったよね。」
「いえ…全然」
緊張しすぎて、支店長の顔を見れない。

「深田くん、やっと来た。今夜は二人の貸し切りだから楽しんでね。」
「えっ!?貸し切り!?」
たしかに、お店に入った時『今日はお客さんいないなぁ…』とは思ったけど…貸し切りって!?

「マスター、わがまま聞いてくれてありがとう。」
「どういたしまして。深田くんはうちの常連客だからね。さてと…邪魔者は消えるね。」
「えっ!?マスター!?」

マスターは本当に裏に引っ込んでしまった。
え?え?支店長と二人きり!?

「佐伯さん…いきなりごめん。」
「いえ…驚いてるだけなので…」
「今日はさ…佐伯さんに話したいことがあって、呼んだんだ。」
「話したいこと…ですか?」
「うん…」
何だろう?緊張する…


*****

マスターに頼んで、貸し切りにしてもらった。
これを逃したら、俺にはもうチャンスがない。
ずっと逃げてきた。自分の気持ちを伝えることから。そんなことは、もうやめるんだ。

佐伯さんは、とても不思議そうな顔をしている。
当たり前か。いきなり誘われた上に、店が貸し切りなんだから。
わけがわからないだろ。

「俺の歳知ってる?」
「え?…36歳ですよね?」
「正解。もう歳だよなぁ(笑)」
「支店長はまだまだお若いです。」
「ありがとう。…こんな歳だからさ、誰かと付き合うのもさ、簡単にはできないんだ。…やっぱりさ、『結婚』を意識しないと…。」
「たしかに…そうかもしれませんね。」

彼女はいつも通り、静かに俺の話に耳を傾けてくれている。
居心地が良いんだ。佐伯さんといると。

「佐伯さんは…そんな付き合い嫌?」
「えっ!?私ですか!?私に聞くより、気になる人に直接聞いた方が…」
「だから、佐伯さんに聞いてるんだ。」
俺の言葉に、佐伯さんは驚いた顔をして、俺を見た。

「ストレートに言う。…俺は、佐伯さんが好きなんだ。…俺と結婚を前提に付き合ってほしい…と思ってる。」
俺は彼女の目をじっと見て、言った。
年齢よりも少し幼い顔つきの彼女は、顔を真っ赤にして、今にも泣きそうな目をしている。
そんな彼女が可愛くて愛しくてたまらないけど…泣くほど嫌なのか?やっぱり困らせてるのか?

しばらくの沈黙の後、彼女がきえいりそうな声で言った。
「嫌じゃないです…嬉しいです…私…支店長のこと…好きだから嬉しいです。」
「…本当に?山口は?山口はいいのか?」
「はい…。山口さんとは別れました。…私…ずっと支店長のこと好きで…。でも…自分なんか支店長にふさわしくないから…頑張って諦めようとしたけど…諦められなくて……支店長?」

俺は、もう頭で何も考えられなくなっていた。
目の前にいる彼女があまりにも愛しくて、彼女を抱き締めた。

「自分を卑下するのやめろ…って
言っただろ?俺は、佐伯さんが好きで好きでたまらないんだ。だから、そんな風に自分を悪く言うな。」
「支店長…私も支店長が好きで好きでたまらないです。」
「茉莉子…」

チュッ

名前を呼ばれて顔を上げた彼女の唇に、俺は触れるだけのキスをした。
そんなピュアな口づけを俺たちは何度も交わしていた。


おわり
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by rin1119a | 2013-12-12 12:50 | 運命の人 | Comments(0)

運命の人 第27話

「急に悪いな。」
「いえ…嫌なら断りますから。」

仕事終わりに、突然支店長から飲みに誘われた。何故か断ることができずノコノコと付いてきてしまった。
多分…何かある。そんな気がする。

内心ビクビクしているが、支店長はいつも通り颯爽としている。そんな姿を見ると、この人を警戒しまくって、はったりかましてる自分が本当に小さな人間に思える。


俺たちはほとんど無言で、酒だけは進んでいた。
支店長は酒を飲んでるだけなのに、その姿すら絵になる。

「今日…お前を誘ったのは…」
…来た…
「佐伯さんのことを話したかったからだ。」
…やっぱり…
「俺は…」
「茉莉子のこと好きなんですよね?」
「…気づいてたのか…」
支店長は、驚いたような表情を見せた。初めてだな…いつもの余裕をほんの少しだけ崩してる。
…と言っても、一瞬で元に戻ったが。

「俺、そんな鈍感に見えます(笑)?まあ、気づいたのは最近だから、鈍感ですね(笑)」
「山口…」
「俺、嫌な奴でしょ?支店長の気持ち知ってて、茉莉子との幸せな話をしまくって(笑)いちいち見せつけるように、毎日一緒に出勤してきて(笑)」
「…」
「俺を呼んだのは、それだけが理由ではないですよね?早く言ってください。」
上司に対する口調とは信じられないくらい、俺は乱暴な口調になっていた。
そうでもしないと、自分を保てない。

「…俺は、彼女に自分の気持ちを伝えようと思ってる。…それをお前に話したくて呼んだんだ。」

ちょっと待てよ…
お前から奪ってやる…じゃねえの?

「なんで…いつもいつもそんなカッコつけてるんですか!?正直に言えばいいじゃないですか!!お前から彼女を奪ってやるって!!しかも、いちいちばか正直に俺に言わなくてもいいじゃないですか!」

俺の大声が店内に響き渡っていた。
言い終わった瞬間、俺は恥ずかしさやら何やらで一杯になった。
それなのに…支店長は一瞬顔色を変えただけで、全く動揺していない。
何なんだよ!クソッ!

「…一番大事なのは、彼女の気持ちだから。決めるのは彼女だ。」
支店長の落ち着いた声が、俺の心に突き刺さった。
茉莉子の気持ち…俺は…
茉莉子が伝えてくれた気持ちを無視して、自分の気持ちばかり押し付けてる。

そのことに気づいていた。
でも…どうしても茉莉子を手放したくなくて…

「お前には、本当に申し訳ないことをした。いつも良い顔しておいて、いきなりこんな話をして…本当にすまない。」
もう…完全に俺の負けだな…。
最初から負けてたけど…。

「あーあ!俺ってめちゃくちゃ哀れですよねー(笑)!」
「山口…」
「もう…話終わりですか?」
「…あぁ…」
「…俺も1つだけ言いたいことがあるんです。」
「何だ?」
「…俺は…支店長を尊敬しています。だから…これからもよろしくお願いします。」
「…ありがとう。こちらこそ、これからもよろしく。」
「…じゃあ、俺はお先に失礼します。」

俺は、そそくさと店を出た。

今までのノロケ話はただのはったりだったとか、茉莉子も支店長を好きだとか…。
そんなことまで言ってやるほど、俺はできた人間じゃない。


*****

「マスター…私…どうしたらいいですか?」
私は、cherryに来ていた。
仕事を終えてからまっすぐ家に帰る気になれなくて…。

山口さんとの付き合いはズルズル続いている。私がハッキリしないのが悪いけど…どうしたらいいのかわからない…。

「茉莉子ちゃんはどうしたい?」
「…」
どうしたいかわからないから…聞いているのに…
「…質問変えよっか…。」
黙ってしまった私を見て、マスターは言った。

「茉莉子ちゃんは、今付き合ってる人のこと好き?…『好き』はLikeじゃなくて、Loveの方ね。」
「………好きじゃないです。いい人だけど。」
「うん。じゃあ、次の質問。茉莉子ちゃんは、誰のことが好き?」

私が困っている時、直接的であれ間接的であれ、必ず助けてくれる。
自信を持てない私に、優しく『大丈夫!』と背中を押してくれる。
私だけじゃなくて、支店のメンバー全員を本当によく見ている。
気さくで、明るくて、誰に対しても優しい。

支店長の顔しか浮かんでこない…。

「私……支店長が好きです…」
「うん。そうだね。だったらさ、どうしたいかは俺が言わなくてもわかるはずだよ。」
「…」
「少しだけ、アドバイス。」
「…はい。」
「人はね、ハッキリ断られるよりも、ズルズル引き延ばされる方が辛いんだよ。」

ズルズル引き延ばされる方が辛い…。今…私が山口さんにしていることだ。

「それから…自分の思ってることをちゃんと全部、相手に言ってみようよ。茉莉子ちゃんの付き合ってる人は…多分聞いてくれる人だと思うよ。」
私…山口さんに申し訳ないと思うあまり、気持ちをちゃんと伝えていない。
『山口さんと付き合えない』とだけいきなり言われても…。
自分が逆の立場なら…それだけ言われても受け入れられないと思う。

ちゃんと話さなきゃ…私がしていることは…ただ自分を守っているだけだ。
寺川さんに色々言ってもらった時点で、気づいていたのに…ズルズルと引き延ばしてしまった。

ダメだよ!私!

「マスター、ありがとうございます。私、彼とちゃんと話します!」
「うん。」

私は、その場で山口さんにメールを送った。
話があります…と。


つづく
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by rin1119a | 2013-12-11 21:18 | 運命の人 | Comments(0)

運命の人 第26話

「来た来た!」
「遅くなってすいません!」
「誘ったの俺だし、仕事だったんだろ?お疲れ。」

思ったより仕事が長引いてしまって、すっかり待たせてしまった。

「誘ってもらえて嬉しいですよ。あの時以来ですよね、二人で飲むの。」
「だな。あの時より、大差で勝ってやるからな!」
「えーあの時は俺の勝ちでしょ(笑)」
「何言ってるんだ!?俺の方がいっぱい飲んでただろ!」

いつも通りの会話から、飲み比べは始まったのだった。


*****

「子供って本当に可愛くてさー」
旦那はニヤニヤしながら、あやめちゃんの自慢話を始めた。
最近、あやめちゃんは旦那の影響でピアノを習い始めたらしい。

「この前、発表会だったんだけどさ、衣装がめちゃくちゃ似合ってて、お姫様みたいでさー!あ、これがその時の写メ!」
旦那は自慢気にその写メを見せてくる。
ピンクのワンピースに、髪型はお団子のあやめちゃんが他の子たちと一緒に写っている。贔屓目抜きにして、あやめちゃんが一番整った綺麗な顔立ちをしている。
お姫様…というのも納得してしまう。

これだけ可愛かったら、旦那が溺愛して、ありとあらゆる男を敵視するのも理解はできる。

「めちゃくちゃ可愛いですねー!」
「盗るなよ!お前には渡さないぞ!」
自分から写メ見せてきて、のろけたくせにめちゃくちゃだな(笑)
面白いからいいけど(笑)
「盗りませんよ(笑)」
「そうだな。お前には、今大切な人がいるもんな。」
「えっ!?」

何だ!?なんで旦那が知ってるんだ!?

「その人とさっさと幸せになれ。」
「い、いや…俺にはそんな人は…」
「佐伯茉莉子さん…お前の支店の新人さん。」
「なんで佐伯さんを知ってるんですか!?あ、寺川から?」
「そんなことはどうでもいい。なんかさ、お前が頑固でなかなか素直にならない…って風の噂で聞いてさー」
風の噂って…絶対に寺川だろ…それかマスター?
いや、両方?どっちにしろ、余計なことを吹き込みやがって…。

「頑固でなかなか素直にならない…って言われても…」
「俺さ、茉莉子ちゃんのこと全然知らないんだよねー。どんな子か聞かせてよ。」
はぁ!?全然俺の話聞いてないし!
「教えてよ。」
「…彼女は…うちの支店の新人で一番の頑張り屋で…。勉強もしっかりしてる。仕事も丁寧で正確だし、お客さんに対しても懇切丁寧に対応してるから信頼されてるし。」
「へぇーいい子じゃん。」

「そうなんだよ!本当にいい子なんだ!大人しくて控えめなんだけど、たまにリアクションが面白くてさ。素直だから、人に取り入ろうなんて全然考えてないし。いい子だし、仕事もちゃんとできてるのに、自信なさげで…なんだか守ってあげたくなるんだ。笑った顔が本当に可愛くて、あの笑顔見たら癒される。」

佐伯さんの良いところがどんどん出てくる。
あの子の頑張ってる姿や可愛い笑顔を考えると、話が尽きない。

「あーあ…俺、ノロケ聞きに来たわけじゃないのになぁー(笑)」
「…あ!すいません。俺…話しすぎた…」
「よーくわかったよ。茉莉子ちゃんがいい子だってことも、深田が茉莉子ちゃんを好きで好きでたまらないことも。」
「えっ!いや…佐伯さんはいい子だけど…」
「はあ…あんな笑顔全開で延々と茉莉子ちゃんの話をしてたくせに、まだ認めないの?本当に頑固だな。呆れるよ。」
「…」

相手が寺川やマスターや他の人間なら、スッとかわせるのに…。旦那がいつもと様子が違いすぎて、調子が狂って…
何を言っても…うまくかわせる気がしない。

「何をそんなに気にしてるんだ?好きなら、素直になればいいのに。年齢的にもさ、ちょうどいい時期だしさ。」
「…俺はちょうどいいけど…彼女は…」
「えっ?」
「彼女は…まだ23だぞ?まだまだこれからなのに…。36の俺なんかとどうこうなったら…まだ若い彼女に『結婚』を意識させてしまう…。」
「深田…」
「そんな重い付き合い嫌だろ。それに、彼女には付き合ってる奴がいる。そいつも良い奴なんだ。彼女を本当に大切に思ってる。アイツになら、彼女を任せられる。」

バシン!!

「痛っ!何するんですか!?」
いきなり、旦那に背中を思いっきり叩かれた。
「お前…悲劇の主人公になりきるの止めろよ!それじゃあ、美桜の時と同じだろ!」
「えっ!?」
寺川の時と同じだろ…って何で旦那が知ってるんだ?寺川から聞いた?いや…寺川が話すはずないだろ…。

「言っとくけど、美桜からは何にも聞いてないぞ。でも、見てたらわかる。お前、ずっと美桜のこと好きだっただろ。多分…大阪にいる頃からずっと。だから、俺はお前にライバル意識持ってた。認めたくないけど…お前はできた男だし。」
バレてるかも…とは思ってたけど、まさか本当に見抜かれていたなんて…

「でも…最近…お前が美桜を見る目がなんだか変わってきたような気がしてた。…今、茉莉子ちゃんの話をしてたお前の目…昔のお前が美桜を見てた時と同じだった。」
ヤバイ…この人の前ではどんなことを言っても、ごまかせない。

「茉莉子ちゃんが『結婚』を重いと捉えるかなんて、お前が一人でウジウジ考えていても仕方ないだろ。ちゃんと本人にぶつかれば?美桜とかヒョンから話聞いてて思ったけどさ、お前も茉莉子ちゃんも茉莉子ちゃんの彼氏も…みんな向き合うことから逃げてない?」
逃げてる…たしかにそうだ…。
俺は、一人でウジウジ考えているだけで、佐伯さんにぶつかってない。
山口にも良い顔してるだけだ。

「…ありがとう。」
「ちゃんと素直に向き合う気になったか?」
「あぁ。…パクさん、いい人ですね。」
「べつに。お前に幸せになってもらわないと、俺が困るんだよ。」
「え?」
「あやめがお前のお嫁さんになりたいって言ってるんだ。美桜は煽るだけだし…あやめはずっと俺のそばにいることが決まってるのにさ。お前が結婚すれば、あやめは諦めるだろ?だからだよ!べつに、お前のためじゃないからな!」

素直じゃないのは、旦那じゃん(笑)
やっぱりいい人だよな。

「あやめちゃんは、可愛いから、いくらでも彼氏できるでしょ。」
「縁起でもないことを言うな!そんなこと絶対に許さん!お前は、そんなくだらないこと言わずに、茉莉子ちゃんにちゃんと気持ち伝えることだけ考えるんだ!さあ、気合い入れるために飲むぞ!」
「はい!」


*****

「ユチョンが!本当にすみません…」
『いいよ。深田くんと仲良く酔いつぶれてるから(笑)あやめちゃんを一人にさせるわけにもいかないでしょ?今日はうちに泊めるから。』
「すみません…もう…『深田くんに気合い入れて』とは言ったけど、『仲良く酔いつぶれて』なんて言ってないのに…。」
『ふふっ。二人とも楽しそうに飲んでたし、ユチョンはしっかり深田くんに喝入れてたよ。』
「ホントですか!?やったー!」
『うん。バッチリ。やっぱりユチョンは美桜さんに弱いね(笑)』

良かったー。これで深田くんと佐伯さんが幸せになれるわ!
ユチョン、ありがとう!


つづく
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by rin1119a | 2013-12-10 17:34 | 運命の人 | Comments(6)

運命の人 第25話

支店長は、いつも通りの反応だった。
少しくらい取り乱せよ!
茉莉子のこと好きなんだろ?
好きな女が他の男に抱かれてるんだぞ。
なんで、そんな涼しい顔してられるんだよ!?

…俺は、茉莉子を抱いてないけど。
いくら俺が最低でも、自分に気持ちのない相手を無理に抱くほど、落ちぶれてはいない。

なんで支店長はあんなに余裕なんだよ…。
茉莉子のこと好きなんじゃねえの?
好きだったら、なんで俺の相談に乗って、応援までしてるんだ?

『支店長は寺川さんが好き』って茉莉子は思ってるみたいだけど、違うと思う。
寺川さんにはかなり気を許してるとは思うけど、そういう風には見てない気がする。昔はどうだったかは知らないが。


*****

寺川支店長…ホンマに美人やなぁ。見てるだけで幸せやわ。
美人なうえに、仕事はメッチャできるし。でも、仕事以外(飲み会とか)では、おっとりした可愛い人で…。上司相手に可愛いって言うのも失礼かもしれんけど。

こんな女性らしい可愛い人なら、私も少しは恋愛対象に入れてもらえるんかな…。

「神崎さん、お疲れ様。今日は急ぎの仕事もないし、帰ってゆっくりしましょ。最近、なんだか疲れてるみたいだし。」
「大丈夫ですよ!元気が取り柄ですから!」
「元気が取り柄の人でも、疲れる時はあるのよ?今日は早く帰って充電しましょ。良い仕事をするには、適度な休息が必要なんだから。」
「支店長…」

たしかに…最近疲れてるというか、仕事に集中できてない気はしてた。
まさか見破られてたなんて…。
集中できてない原因がプライベートなことやから、申し訳ない…。

山口…大丈夫かな…
そりゃあ、深田支店長と山口なら、深田支店長の方が良い男やと思うよ。でも、山口だって良いとこいっぱいあるねん。
ちょっと空気読まれへんけど、優しいし真面目やし、人のためにメッチャ頑張る人。

茉莉子ちゃんにも、山口のこと好きになってほしい。
山口があんなに辛そうにしてる姿…見てるのも辛いもん。

茉莉子ちゃん…山口に写メ見せてもらったことあるけど、女の子らしい可愛い人やった。
守ってあげたくなる感じ。きっと奥ゆかしくて控えめな可愛い人なんやろうな…。
私とは正反対やな…。


*****

ブーブー

メールだ…ん?
「えっ!?」
メールの主が意外すぎて、俺は思わず声を出してしまった。
ここは自分の家だから、聞いてる人間なんかいないが。

『パクです。登録してくれてるから、名乗らなくてもわかるか…。

急で悪いけど、明日の夜空いてる?飲み比べしたいから、仕事終わったらcherryに来て。
ヒョン(マスター)に俺とお前のどっちが強いか判定してもらうからな!』

寺川の旦那帰ってきてるんだ…。
飲み比べか…昔したよな(笑)
旦那がかなり強いから楽しかったな。またしたいとは思っていたけど、機会がなくてあれ以来一度もしていない。

明日は何も予定ないし、決まりだな。
俺は、すぐに返事をして、寺川の旦那と飲み比べをすることになった。

最近、飲みたい気分だったからちょうどいい。絶対負けねえ。


*****

「支店長…すみません…娘さん大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。誘われて着いてきてるんだから。今日は主人がいるから大丈夫。私で良かったら、飲み相手になるわ。私、こう見えても結構飲むから任せて!」
「知ってます(笑)」

神崎さんに誘われて、私は飲みにやって来た。
なんだか最近元気がないし、個人的にゆっくり話してみたいな…と気になっていたからちょうど良かった。


「人の気持ちって難しいですね…」
お酒が進んでくると、神崎さんがぽろっと口にした。
最近の元気のなさの原因かな…。
「同期が…すごく苦しんでるんです…」
「うん。」
「彼女さんに他に好きな人がいるらしくて…」
「そっか…それは辛いね…」
「すごく良い人なんです。絶対に彼女さんのこと大事にするし、浮気なんか絶対にせえへんし。」

なんだか妙に感情こもってる。ただの同期なのかしら?
もし、今の話が元気のない原因だとしたら…神崎さんはその同期の人のこと…

「…神崎さん…もしかしてその同期の人のこと好きなの?」
「えっ!!!!ちゃ、ちゃいますよー!良い人やけど、空気読まれへん変人やし!!!!」
顔真っ赤なんだけど(笑)
なんだか神崎さんの意外な一面を見れたわ。
普段は元気で周囲のムードメーカーで、物怖じしない人。それなのに、こんな風になるんだ。
すっごく可愛い!

「その人も辛いと思うけど…神崎さんはもっと辛いんじゃない?好きな人の苦しんでる姿見るのも、自分の気持ち押さえて相談に乗ってるのも…」
「す、好きちゃうもん!!」
タメ口になってる(笑)
可愛すぎるよ、神崎さん!こういう一面見せたら、その同期の人に効果あるかも。絶対にあるよ!

同期の人と神崎さん、彼女さんと彼女さんの好きな人…でうまくおさまらないかなー。


つづく
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by rin1119a | 2013-12-08 18:35 | 運命の人 | Comments(6)

運命の人 第24話

俺…何やってんだよ…

いつもおっとりしてる茉莉子があんな声出すなんて…そんなに支店長が良いのかよ…
そう考えたら、今まで抱え込んでいたものが爆発してしまった。

支店長が良い人なのはわかってるよ。
俺は、学生の頃、うちの会社の説明会で支店長と話したことがあるんだ。支店長(その頃は新卒採用担当だった)はめちゃくちゃかっこよくて、『俺はこんな人になりたい!社会人ってカッコいい!』と憧れた。

入社3年目の今年、支店長と同じ場所で働けて、気にかけてもらえて本当に嬉しいんだ。
一緒に働いていると、俺が思っていた以上に凄い人だとわかった。

だから…わかってるよ。
いちいち茉莉子がむきにならなくてもな。
でも…わかっているからこそ、自分なんかじゃ敵わないからこそ、余計に腹が立つんだ。

ブーブー

さっきからケータイうるせぇ…誰だよ…
…神崎か…え?アイツ何回かけてくるんだよ。嫌がらせか?
何か用かな…めんどくせぇ…

「もしもし…」
『あーやっと出たー!』
「何?何か用?」
『うっわ!アンタ、声暗すぎ!何かあったん?』
「…別に。」
『ふーん。なあなあ、彼女さんと最近どうなん?』
「…用ってそれ?」
『彼女さん…茉莉子ちゃんやったっけ?茉莉子ちゃんとケンカでもしたん?さっきから声めちゃくちゃ暗いで。』
「…なあ…俺…どうしたらいい?茉莉子のこと好きなのに…傷つけたくない、大事にしたいって思ってるのに…俺…傷つけてるんだ…。離してあげたい…でも…できないんだ…」

小さい体がガクガク震えてた。
目をぎゅっとつぶって、怖さに耐えてた。
そんな怖い想いさせたくない。
茉莉子の笑った顔が好きなんだ。
なのに…俺は…


*****

「最近、考え事が多いね。」
「そう?」
「そうだよ。最近ずっと。…そんな顔をしてる原因は…茉莉子ちゃんだよね?」
「…いや…」
佐伯さんを送った後、俺はcherryに来た。なんとなく帰る気にならなかったから。

「茉莉子ちゃんもね、最近深田くんと同じような表情してるよ。」
「え?」
彼女が気になって仕方ない。
最初は、真面目でコツコツ頑張る子だな…って思ってただけだったのに。
「素直じゃないよね、二人とも。」

そう呟くと、マスターは別の客の所へ去っていった。


*****

私は、部屋で泣いていた。

山口さんの目や口調や力が怖かったのもある。…でも、あの優しい彼をそんな風にさせてしまったのは、私だ。
きっとたくさん傷つけてきた。口には出してないけど、いっぱい悩んでたんだと思う。

私は、なんてズルイ人間なんだろう。
彼への申し訳なさ・自分への苛立ち…色んな気持ちが重なって、涙が止まらなくなった。


*****

「ママー茉莉子おねえちゃんからお返事まだー?」
「まだよ。茉莉子お姉ちゃんも忙しいのよ。…あ、もうこんな時間だから寝ようね。」
「嫌だー!茉莉子おねえちゃんのお返事待つー!」
「だーめ。もう遅いから寝るの。」

はぁ…本当にあやめは佐伯さん大好きね。
深田くんと佐伯さんが結婚すれば…あやめも喜ぶかしら?
…失恋しちゃうけど(笑)

佐伯さん、山口くんに気持ち伝えられたかな…。


*****

全然眠れなかった…

ブーブー

山口さん?…こんな朝早くにどうしたんだろう…

「もしもし?」
『あ、おはよう!体調どう?』
いつも通りの明るい声…
「もう大丈夫です。あ、ありがとうございました。」
『良かったー!じゃあ、一緒に会社まで行こー!』
えっ?


私が戸惑っているうちに、電話は切られ、30分後くらいに彼はうちに私を迎えに来た。
私と彼は、この日から毎日一緒に通勤することになる。


*****

佐伯さんと山口は、最近毎日仲良く一緒に出勤してくる。
その姿を見るたびに、俺は複雑な気持ちになる。

「茉莉子可愛いんですよー!」
山口は、助手席の俺に自慢げに話してくる。…自慢げに…というのは、多分俺の気のせいだが。
「…うまくいってるみたいだな。」
「はい!最中の時も可愛いんですよ!」

なんなんだ…
付き合ってるんだから、当たり前だが…

「…お前、真っ昼間からそんな話すんなよ…」
「じゃあ、真っ昼間じゃなかったらいいんですか(笑)?」
「…俺は、他人の床事情を聞く趣味ねえよ…」

なんだか、佐伯さんが本当に山口の彼女なんだと見せつけられているようで…
俺、冷静に返せてるよな?取り乱したりしてないよな?

山口は、俺の知らない佐伯さんを知っている。その事実がこんなに自分を苦しめるなんて…。
少し気になるだけだったのに…今俺はあの子のことが頭から離れない。

この歳になって、またこんな気持ちになるなんて自分でも驚いてる。

可愛い笑顔も、頑張り屋な所も、ちょっと引っ込み思案な所も…全部…好きだ。
この気持ち…どうやったら治まるんだ…。


つづく
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by rin1119a | 2013-12-07 09:56 | 運命の人 | Comments(8)

運命の人 第23話

茉莉子の部屋は、彼女のイメージ通り可愛らしい雰囲気だ。

俺は彼女をベッドに寝かせた後、レトルトのお粥を作っていた。
台所から茉莉子の寝顔を見ながら、さっきの支店長を思い出していた。

まさか…支店長が茉莉子を?
いや…でも、そうだとしたら、なんで俺の恋愛相談なんかに乗ってるんだ?好きなら堂々とすればいいのに。

支店長は、茉莉子を気にかけてはいると思う。でも、それはただ部下として…だよな?そうだよな?
茉莉子が脳しんとうで病院に運ばれた日、支店長は茉莉子に会いに行ったらしい。…深い意味なんてないよな?

『支店長…』

うわごとで支店長を呼んだ茉莉子。
支店長は、仕事できるし、気さくで誰にでも優しいし、顔も男前だ。女なら誰でも憧れるだろう。
茉莉子…ただの憧れだよな?男としてなんて見てないよな?
俺…支店長になんか敵わねぇよ…。

「さてと…できた!」
できたお粥を茉莉子のそばに持っていく。
「茉莉子…」
彼女の名前を呼び、起こそうとした時…

ブーブー

彼女のケータイにメールが入った。ふと、ケータイに目をやると、『寺川さん』と表示されていた。
先輩か誰かだな…

「茉莉子、お粥できたよ。少しでも食べた方がいい。」
「…うぅん………えっ!?山口さん!?」
「覚えてない?茉莉子倒れたんだ。」
「倒れた…あ!支店長と話していて…支店長は!?」
支店長…今茉莉子の口から一番聞きたくない名前…

「支店長から連絡してもらって、俺がここまで連れて帰ってきたんだ。」
「そうだったんですね。山口さんありがとうございました。」
「お粥、作ったから食べて。薬もあるから。」
「えっ!お粥まで!ごめんなさい!本当に申し訳ないです!もう私大丈夫ですから、山口さんおうちに…」
「嫌だ。彼女が風邪で寝込んでるのに、帰る彼氏がどこにいるんだよ。」

彼女…彼氏…なんだか自分で言っててむなしい…


*****

まさか倒れたなんて…迷惑かけすぎ…

「あ、そういえばさっき、メール入ってたぞ。」
「メール?………ホントだ。寺川さんだ!」
思わず私ははしゃいでしまった。
「そんなに仲良いんだ。先輩なの?」
「はい!大先輩です!支店長の同期の方だから!」
「支店長の?………あぁー!あの寺川さん?」
山口さんは納得したような表情でそう言った。

「寺川さんのこと知ってるんですか?」
「一回だけ会ったことあるよ。支店長と寺川さんが昼飯食ってる店に、たまたま俺もいてさ。めちゃくちゃ美人で驚いた。男前の支店長と、美人の寺川さんお似合いだよな。」
お似合い…いちいち言われなくてもわかってる。

「支店長、カッコいいからモテるんだろうな。それなのに、まだ独身なのは遊び足りないからか(笑)?羨ましすぎる。」
遊び足りない…支店長はそんな人じゃない…。
「仕事できて、かっこよくて、性格も良い。で、まだ独身ってことは…相当女グセが悪いのか…。」
山口さんは、一人納得しているけど…

「まあ、俺は茉莉子ひとすじだし
…」
「支店長はそんな人じゃありません!支店長は、ずっと寺川さんのこと忘れられないから独身なんです!遊び人みたいに言わないでください!」
私は気がつくと、大声をあげていた。支店長…優しいもん。誠実だもん。

「…ビックリした…。なんでそんなむきになるの?」
「むきになんか…」
「支店長は、茉莉子のただの上司だよな?」
「…そうです。」
「じゃあ、俺は?」
「え?」
山口さんなんか怒ってる?なんかいつもと様子が…
あの時…映画を見に行った日と同じ目をしてる…

「俺は茉莉子の彼氏で、茉莉子は俺の彼女。」
「………」
「なんで黙ってるの?違わないよな?」
「…………」
どうしよう…私…
「もう一回言う。支店長は茉莉子のただの上司で、茉莉子は支店長のただの部下。俺は茉莉子の彼氏で、茉莉子は俺の彼女。違う?」
「……………」
「黙ってないでなんか言えよ!」
「え…きゃあ!!」

私は彼に押し倒されていた。
「なあ?何か言えよ!」
「ごめんなさい…私…もう山口さんと…付き合えない」
「やっと言ってくれたか。…でも…俺は離さないから。」
「え…」
「俺は絶対に茉莉子と別れない!」
「山口さん!やめて!」

山口さんが私の体に覆い被さってきた。嫌…怖くて…体が震えて声も出ない…

「茉莉子…」
え…体がいきなり軽く…
山口さん…ぎゅっとつぶっていた目を開けると、山口さんは私から離れていた。

「…帰る。…謝らないから俺…」
山口さんは私の方を見ずに言って、出ていった。


つづく
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by rin1119a | 2013-12-05 18:35 | 運命の人 | Comments(2)

運命の人 第22話

山口さんと別れる…と決めたものの、言い出しづらくてズルズルと付き合いを続けている。
それが一番失礼なことなのに。
どうしよう…どう伝えれば一番彼を傷つけずに済むだろう。

なるべく考えずに済むように、私は最近仕事に邁進している。

『自分は彼に気を使っている。傷つけないように配慮している。』と思っていた。
その『配慮』が彼をさらに傷つけているなんて思いもせずに。


*****

佐伯さん…大丈夫か?
なんか今日ぼんやりしているような…顔色も悪いし…。
残業なんか止めさせて、早く帰した方がいいな。

「佐伯さん。佐伯さん!…佐伯さん!」
俺は、残業をしている彼女に声をかけた。
「……………支店長!?」
やっぱりぼんやりしてる。
「今日は帰ってゆっくり休んだ方がいい。この仕事そんなに急ぎじゃないし。最近、佐伯さんずっと残業してるだろ?頑張るのはいいけど、たまには休まないと体もたないぞ。」

彼女は、最近かなり仕事をするようになった。前から真面目に取り組んでいたけど、最近はやり過ぎだろ…というくらい。
上手く気を抜かないと、疲れるぞ。彼女のような真面目なタイプは特に。

「いえ…大丈夫です…あともう少しですし…」
「ダメだ。帰るんだ!…熱っ!ほら、絶対に熱あるぞ!帰るんだ!」
彼女の額に手を当ててみると、かなり熱い。
「大丈夫です…離してくださ………」
「佐伯さん!?」

最後まで言う前に、佐伯さんは倒れた。
「支店長代理、あとはお願いします。佐伯さんを家まで送ります。」
俺は、あとのことを全て支店長代理に任せて、佐伯さんを家まで送ることにした。


*****

支店長から茉莉子が倒れたという連絡を受けて、俺は茉莉子のマンションの前で待っている。

あれか?
待っていると、タクシーがこっちの方に向かってくるのが見えた。
あ…止まった。
そのタクシーは、俺の目の前で止まった。

「茉莉子…」

扉が開いた瞬間、俺は駆け寄ろうとしたが、思わず止まってしまった。

支店長…

支店長はとても心配そうな表情で茉莉子を見つめ、優しい手つきで彼女の頭を撫でていた。
まるで…大切な人にするような…ただの部下に対するものには見えない。

「山口、来てくれたのか。ありがとう。」
俺に気づくと、支店長はいつもの姿に戻った。
「…彼女が倒れたのに、彼氏が放っておくわけないでしょう。」
「…そうだな。とりあえず、薬と熱冷まシートくらいは買ってあるから。あとはお前に任せて、俺は帰る。」

茉莉子を俺に預けると、支店長は去っていった。


「……うぅ…」
俺が呆然としていると、茉莉子が苦しそうな声をあげた。
「あ、茉莉子ごめんな。すぐに家に連れてくからな。」
俺はそう言って、茉莉子を抱き上げた。
「…うぅ…支店長…」

その声を聞いた瞬間、俺はどん底に突き落とされた思いがした。
なんで…茉莉子…
いや…ここまで支店長に送ってもらったから…そうだよな…
俺は、痛々しいとしか言い様のない理屈を必死に作っていた。


*****

『彼女が倒れたのに、彼氏が放っておくわけないでしょう。』

彼女…彼氏…
当たり前だ。
なのに…山口の口からそれらの単語を聞くと、なんだかもやっとする。
もやっとする理由はわかりきっているが…。

佐伯さんの具合はどうだろうか…
山口に電話かけて…いや、山口がそばにいるんだから、余計なことはしなくていい。


つづく
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by rin1119a | 2013-12-04 16:09 | 運命の人 | Comments(2)

運命の人 第21話

『佐伯さんと山口お似合いだし、これからも仲良くやれよ。』

私の想いなんてもう叶わない…
応援されてる…
山口さんは本当にいい人だから、私は…山口さんを好きになろう。

「茉莉子おねえちゃんどうしたの?」
「…えっ!何でもないよ、ごめんね。」
こんな小さい子に気を使わせてどうするのよ…。

この前、cherryに行くと、マスターのそばにあやめちゃんがいた。寺川さんが仕事で保育園の迎えに間に合わない時、マスターがあやめちゃんを預かっているそうだ。

とはいえ、cherryはbarだから、あやめちゃんは裏の住居部分でママを待っている。でも、その日は待ちきれなくて、お店の方に出てきてしまった。
そこで、たまたま来店していた私と会ったのだ。

まさか、あやめちゃんのお母さんが寺川さんだったなんて。
たしかに、あやめちゃんの大きな瞳は寺川さんにそっくりだ。
世間…って狭い。

その日以来、私は時々寺川さんの家にお邪魔している。

「もうすぐね、ママのケーキできるよ!ママのケーキ食べたら、すぐに元気になるよ!」
「あやめちゃん…」
あやめちゃんは何か察しているのか、今日はずっと『茉莉子おねえちゃんどうしたの?元気がないよ?』と言っている。

「ケーキできたよー!」
台所から寺川さんがリビングを覗いて、私たちに言った。
「はーい!茉莉子おねえちゃん、食べよー!」
「うん!」


*****

「…寺川さん…人を好きになるにはどうしたらいいですか?」
ケーキを食べていると、佐伯さんが突然話しだした。

その人…って…山口くんだよね…
山口くんから『佐伯さんと付き合えることになったんです!』ってメールが来たから、二人が付き合っていることだけは知っている。

佐伯さんが本当にそれでいいのかどうか心配だったけど…。
やっぱり良くないじゃない!深田くんのバカ!何してるのよ!

「努力して好きになるんじゃないよ。…というか、努力して好きになるなんて、相手の人にすごく失礼だよ。」

「茉莉子おねえちゃん、大丈夫?ママ、茉莉子おねえちゃん泣いちゃったよー!茉莉子おねえちゃん泣かしちゃダメ!」
「ごめんなさい!キツく言い過ぎたわ。ごめんね。」

私は、あやめと二人で泣き出した佐伯さんをなだめていた。


*****

寺川さんの言葉に、私は何も言い返せなかった。あまりにもその通り過ぎて、涙が溢れてしまった。

「…ぐすん…ごめんなさい…寺川さんの言う通りなんです…ぐすん…」
寺川さんとあやめちゃんに背中を擦ってもらって、私は少しずつ落ち着いていく。

「佐伯さん…山口くんを好きじゃないし………他に好きな人いるよね?」
「どうしてそれを…」
「cherryで見た時に思ったけど…佐伯さん、深田くんのこと好きでしょ?」
思ってもない指摘に、私は熱くなった。そんなにバレバレなの?マスターにも寺川さんにも一度で見抜かれるなんて…。

「茉莉子おねえちゃん、見る目あるー!深田のお兄ちゃんはカッコいいし、優しいもん!あやめも深田のお兄ちゃん大好き!」
そう言ったあやめちゃんを優しく撫でながら、寺川さんは言った。

「そうだね、深田くん素敵だもんね。…佐伯さんみたいなおしとやかで可愛い子がぴったりだと思うの。」

えー!?そんな…私なんか支店長と釣り合わないし…

「佐伯さん…私…主人と結婚する前にね、別の人と婚約までしてたの。」
「え!?」
突然の寺川さんの過去の話にビックリする。
「………その人って…」
「深田くんじゃないよ。全然別の人。でも、その人と付き合ったのは…主人を忘れるためだったの。」
私と同じ…
「でも…結局主人を忘れられなくて、その人をたくさん傷つけて別れてしまったの。すごくいい人だった。真面目だし、誠実だし…でも主人をどうしても忘れられなかった。」

私も…山口さんを傷つけてしまってる…。支店長を想いながら、山口さんと一緒にいる…最低だ。

『ちゃんと決着をつけずに、別のことに逃げても、何の解決にもならないよ。』
マスターに言われたこの言葉の意味…やっとわかった。
私…逃げてるだけだ。

「寺川さん………私…山口さんと別れます。」
「うん。その後、深田くんにちゃんと自分の気持ち伝えてね。」
「え…そ、それは…振られるのがわかっててそんな…」
「わからないよ!深田くんだって佐伯さんのこと好きかもしれないし!」
「そんなの絶対にあり得ません!支店長は寺川さんが好きなんですよ!」

私がそう言うと、寺川さんは固まった。

「もー!ないわよ!ただの戦友よ!周りの人から勘違いされて困ってるの。」
寺川さんは、笑いながら言った。
「でも…支店長は…」
「とにかく、深田くんに直接聞けばいいの。私、協力するからね!いつでも頼って。その前に、山口くんとはちゃんとケリつけてね。」

…私…山口さんと別れよう。まずはそこからだ。


つづく
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by rin1119a | 2013-11-25 17:44 | 運命の人 | Comments(4)

運命の人 第20話

「はぁー!?あんた、何やってんの!?そんな大人しい子にいきなりそんなんしたら、怖がるの当たり前やんか!」

俺の心に、隣のこの女の大阪弁がグサグサ突き刺さる。神崎の言う通りだ。
俺は何やってたんだよ…。
『ゆっくりでいいから』なんてカッコつけたこと言ったくせに、茉莉子を怖がらせて…

「キスだけにするつもりだったんだよ…」
「『つもり』じゃあかんやん!…まあ、山口も男やし、気持ちはわかるけどさー。清純派の攻略は難しいなー。」
「攻略って…」
「まあ、ちゃんと謝ったんやろ?それやったら問題ないやん。」
「……………」

あれから1週間…すぐに謝りのメールは送ったけど、何となく気まずい。
それまでは俺から必ずしていたメールも、なんだか怖くてできない。

「やってもうたこと気にしたってしゃーないやん!アンタが悪いんやから、アンタが今まで通りの態度しなあかんで!」
「…あぁ…」
「暗いなぁー!もう!アンタの取り柄は元気しかないんやから、元気出し!」

同期の神崎に叱咤激励され、俺はまた頑張る決意をしたのだった。


*****

「支店長…申し訳ありませんでした。」
「いいのよ。部下が失敗した時に、一緒に謝るのは上司として当たり前のことなんだから。次からは気をつけてね。」
「支店長…」
「もう解決したんだから、そんな浮かない顔しないで。元気と明るさが神崎さんの良い所なんだから。」

今日は、部下がお客様を怒らせてしまったから、一緒に謝罪をしに行った。
彼女は大阪出身のとても元気な女性で、うちの支店のムードメーカーだ。

深田くんの支店の山口くんと多分同じタイプ。そういえば、山口くんも3年目だったわね。
この世代は元気な人が多いのかしら。


*****

『茉莉子、明日の昼暇?美味しいランチ食べに行かない?店もオシャレで良い感じなんだ(^ー^)』

山口さん…
あんな風に拒絶してしまったのに、彼はまるでなかったかのように普通に接してくれる。
すぐに謝りのメールがきた後少し連絡が途絶えたけど、今は完全にいつも通りになった。

「はい。カシスオレンジ。」
「ありがとうございます。わぁ!綺麗!」
「今日は、特別可愛く飾りつけしてみたんだけど、どう?」
「すごく素敵です!飲むのが勿体ないなぁ。」

美味しい!ちょっと元気出たかも。

♪♪♪♪♪~

カシスオレンジで少し元気になった私の耳に、大好きな曲がはいってきた。

「あ!チェリムのYou are my sunshine!」
「茉莉子ちゃん、イ・チェリム知ってるんだ。」
「はい!大ファンなんです!」
イ・チェリムは、私が高校生の頃くらいに大ブレイクした韓国の歌手。
当時、私は全く韓国の歌手には興味なかったけど、友達にチェリムの日本デビューイベントに連れていかれて、彼女の魅力にハマってしまった。

見た目は普通の可愛い女の子なのに、凄みすら感じるパフォーマンスをするのだ。
You are my sunshineは、チェリムの代表曲のうちの1つで、ピアノの音色とチェリムの優しい歌声が素敵なバラードだ。

「へぇー日本でも活動してたもんね。」
「友達にもチェリムのファンたくさんいましたよ。melodicとどっちの方が良いか…って言い争ってました(笑)」
「あーmelodicとイ・チェリムはライバルだったもんね。正確に言うと、melodicのエリとイ・チェリムか。」
「私はチェリム派だったけど、エリもかっこ良いから好きでした。今でも二人とも大好きです。」

チリン

マスターと盛り上がっていると、扉の鈴が鳴った。

「…佐伯さん…」
「…支店長…」
支店長に会えるかも…と思って来ているとはいえ、実際に会うとなんだか気まずい。
最近は、必要事項以外の会話はしていないし…。
「深田くん、仕事お疲れ。茉莉子ちゃんの隣空いてるよ。座りなよ。」
「…あ、あぁ…」
マスターに促されて、支店長は私の隣に座った。


*****

cherryに行くと、佐伯さんがいた。マスターとずいぶん楽しそうに話していた。
最近、cherryに行く動機が増えた。マスターと話したい・一人でゆっくり飲みたい…という気持ちに変化はないが、もうひとつの気持ちが加わった。

佐伯さんに会えるかもしれない…という期待

山口の彼女なのに…俺は何を考えているんだ。
山口は、この店のこと知らない。この店は、マスターの希望でグルメサイトには全く掲載されていないから、ごく一部の人にしか知られていない。

つまり、俺か佐伯さんが教えなければ、山口にこの店を知られることはほぼ確実にない。
それを良いことに、俺はここに来て佐伯さんを待ってしまっている。そして、会えた時の高揚感…自分の気持ちはわかっている。

俺は、佐伯さんを女として見てる。
でも…ダメなんだ。

「…寺川とずいぶん仲良くなったみたいだな。」
「…はい。寺川さん本当に素敵な人で…」
「アイツも『佐伯さんすっごく可愛いの!』って嬉しそうに言ってた。」
「そんな…私可愛くなんか…」

謙遜なんてレベルではなく、本当に心から彼女は『自分は可愛くない』と思っているらしい。
こんなに可愛いのに…
たしかに、華があるタイプではないし、寺川みたいに誰が見ても美人なタイプではない。
でも…

「俺は…可愛いと思うよ。」
「えっ?」
「佐伯さんの笑った顔を見てたら癒されるし。…あ、俺がどう思ってるかなんかどうでもいいよな(笑)山口も絶対に佐伯さんを可愛いって思ってるよ。」

「…支店長…」
「佐伯さんと山口お似合いだし、これからも仲良くやれよ。」
俺…何言ってるんだよ…
勝手に口から思ってもないことが出てくる…。
「……」
「俺は、若い二人を見守っておくからさ。あーあ俺にも誰かいないかな…」
「………寺川さんがいいんじゃないですか…」
「え、寺川は無理だよ(笑)結婚して子供までいるのに(笑)不倫になる(笑)」

俺はそう笑い飛ばし、話題を変えた。


つづく
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by rin1119a | 2013-11-21 19:34 | 運命の人 | Comments(4)