プライド 第26話
2013年 09月 23日
終わった…。
ユチョンたちのパフォーマンス終了後、私は完全に放心状態になっていた。
テレビで見ていても十分凄さは伝わってきていたけど、テレビよりももっともっと凄かった!『鳥肌が立つ』という言葉はこんな時に使うんだろう。とにかく凄すぎた。
ライヴの余韻に浸っていると、ユチョンよりも少し背の低い知的な雰囲気の男性に声をかけられた。
「あなたが美桜さんですね?」
「そうですけど…。」
なんで私の名前を…あ、もしかしてユチョンのマネージャーさんかな?
「やっぱり。初めまして。私はユチョンたちのマネージャーを務める者です。楽屋までご案内します。」
「あ、わざわざありがとうございます。寺川美桜です。よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく。ユチョンがいつもお世話になっています。」
私たちは挨拶もそこそこに、二人で楽屋に向かった。
*****
「美桜ー!!」
俺は美桜が楽屋に入ってくるなり、思いっきり抱きしめた。
「ユ、ユチョン…みなさん見てるよ…」
「いいの。見せつけてあげれば!」
ガツン!!
「痛っー!?ジュンス!?何するんだよ…痛いよ…。」
「見せつけられる身にもなってよ!もともと、美桜ちゃんは俺が可愛いな…て思ってたのに…。」
「ジュンスお前まだ美桜のこと!?」
「可愛いなとは思ってるよ。
それより、見せつけてないでさ、美桜ちゃんを俺たちに紹介してよ。やっと美桜ちゃんと話せると思って、俺たち楽しみにしてるんだから。」
あ、そうだった。
*****
ユチョンの大切な仲間たちは、みなさんとても紳士的で気さくな良い人たちだった。
「美桜ちゃん、俺のことはジェジュンオッパって呼んでね。ジェジュンさんよりもそっちの方が嬉しいから。」
「はい。ジェジュンオッパ。」
「俺はジュンちゃんね!あと、同い年だから敬語はやめてね。」
「はい…じゃなくて、うん。ジュンちゃん。」
そんな風にみなさんと楽しくお喋りしていた。
ふとユチョンを見ると、何だか寂しそう…。私ばかりジェジュンオッパたちと話してるせいで、ジェジュンオッパたちと話せなくて寂しいのかな?申し訳ないことしてしまってる…。
「美桜ー!帰ろうよー。」
「え、でも…」
「いいから帰るの!」
なんだかとても拗ねた口調…。
私、何かした???
とりあえず、帰ろう。
「じゃあ、私帰ります。お邪魔しました。みなさんのパフォーマンスすっごく素敵でした!」
そう言って帰ろうとする私に、ジェジュンオッパが耳打ちした。
「ユチョンが拗ねてるのは、美桜ちゃんを俺たちにとられたからだよ。これからもユチョンをよろしくね。」
*****
もう!いくら美桜が可愛いからって、みんな美桜を見てニヤニヤしすぎ!俺の美桜なんだぞ!
年上の二人はオッパって呼ばせて嬉しそうにしてるし、ジュンスなんか…。何がジュンちゃんだ!俺がふざけてジュンちゃんって呼んだら怒るくせに!
「美桜ー今日どうだった?」
「すっごく楽しかった!生ってやっぱり凄いね!」
「ふーん…そっか。誰が一番かっこ良かった?」
俺は美桜を抱き寄せながら尋ねた。
「みなさんかっこよかったけど…一番はユチョンだよ。」
ぎゅーっ
「ありがとー!」
俺は美桜を力強く抱きしめ、思いっきりキスしようと顔を近づけた。
「ゴホン!ゴホン!お前、俺の存在忘れてるだろ?そういうことは、二人っきりの時にしてくれ。運転に集中できない。」
「ごめんなさい…。」
「いや、美桜さんは悪くないよ。俺は、君のことになると、周りの目も気にせず鼻の下を伸ばすどっかの誰かさんに言ってるんだ。」
*****
ヒョンは俺たちを美桜の家まで送ると、「今日はしっかり休んで明日に備えろよ。夜更かしはほどほどに。」と俺だけに聞こえるように言って去っていった。
「マネージャーさん良い人だねー。」
美桜は家に入るなりそう言った。
「まあね。口うるさいけど(笑)」
「そんなこと言っちゃダメだよー。ユチョンを思って言ってくれてるんだから。」
「うん。あ、そうだ!忘れるとこだった!はい、美桜にプレゼント。」
「プレゼント?」
「うん。この前大阪に行った時に見つけたんだ。
俺たちもうすぐ付き合って1年でしょ?その記念にちょうどいいかなーって。まあ、1年記念はその日に派手に祝うつもりだけど。」
「ありがとう。…開けていい?」
「うん。」
「わぁー!リラちゃんだ!可愛いー!リラちゃんがたこ焼き食べてる!可愛いー!」
美桜にプレゼントしたのは、美桜の大好きなクマのキャラクターが描かれている小さめの収納箱。
たまたま大阪で目にして、「写真やアクセサリーを入れるのにちょうどいい物がないの。大きいのだとちょっと邪魔だし…」と前に美桜が言っていたのを思い出したから買った。
「ありがとー!可愛いし、大きさもちょうどいいし。…でも、いつももらってばかりで申し訳ないな…。」
「いいのいいの!俺が好きでプレゼントしてるんだから。」
ぎゅーっ
美桜を思いっきり抱きしめた。ここにはヒョンはいない。
車の中でお預けにされたキスを、何度も何度もした。
*****
「ユチョンたちは、絶対にもっと大きな会場で…東京ドームとかで…ライヴできるような人になるよ。」
夜、美桜は俺の腕の中でそう言った。
「ありがとう。そうなれるようにもっと頑張らないとね。」
「絶対になれるよ!今日確信したもん。ユチョンたちは、大きな場所で輝くべき人だよ。」
美桜が少し寂しそうに見えた。
俺は美桜の頭を撫でた。
「そうなっても、俺は変わらないよ。」
美桜は返事の代わりに、とても穏やかで綺麗な笑顔を俺に返した。
その笑顔がとても大人っぽくて色っぽくて、俺はしばらく美桜から目を離せなかった。
いつからこんな表情をするようになったんだろう…。
その笑顔を見た瞬間、「時間は確実に経っていて、俺たちは1年記念を迎えようとしているんだ」と俺はあらためて実感したのだった。
つづく
ユチョンたちのパフォーマンス終了後、私は完全に放心状態になっていた。
テレビで見ていても十分凄さは伝わってきていたけど、テレビよりももっともっと凄かった!『鳥肌が立つ』という言葉はこんな時に使うんだろう。とにかく凄すぎた。
ライヴの余韻に浸っていると、ユチョンよりも少し背の低い知的な雰囲気の男性に声をかけられた。
「あなたが美桜さんですね?」
「そうですけど…。」
なんで私の名前を…あ、もしかしてユチョンのマネージャーさんかな?
「やっぱり。初めまして。私はユチョンたちのマネージャーを務める者です。楽屋までご案内します。」
「あ、わざわざありがとうございます。寺川美桜です。よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく。ユチョンがいつもお世話になっています。」
私たちは挨拶もそこそこに、二人で楽屋に向かった。
*****
「美桜ー!!」
俺は美桜が楽屋に入ってくるなり、思いっきり抱きしめた。
「ユ、ユチョン…みなさん見てるよ…」
「いいの。見せつけてあげれば!」
ガツン!!
「痛っー!?ジュンス!?何するんだよ…痛いよ…。」
「見せつけられる身にもなってよ!もともと、美桜ちゃんは俺が可愛いな…て思ってたのに…。」
「ジュンスお前まだ美桜のこと!?」
「可愛いなとは思ってるよ。
それより、見せつけてないでさ、美桜ちゃんを俺たちに紹介してよ。やっと美桜ちゃんと話せると思って、俺たち楽しみにしてるんだから。」
あ、そうだった。
*****
ユチョンの大切な仲間たちは、みなさんとても紳士的で気さくな良い人たちだった。
「美桜ちゃん、俺のことはジェジュンオッパって呼んでね。ジェジュンさんよりもそっちの方が嬉しいから。」
「はい。ジェジュンオッパ。」
「俺はジュンちゃんね!あと、同い年だから敬語はやめてね。」
「はい…じゃなくて、うん。ジュンちゃん。」
そんな風にみなさんと楽しくお喋りしていた。
ふとユチョンを見ると、何だか寂しそう…。私ばかりジェジュンオッパたちと話してるせいで、ジェジュンオッパたちと話せなくて寂しいのかな?申し訳ないことしてしまってる…。
「美桜ー!帰ろうよー。」
「え、でも…」
「いいから帰るの!」
なんだかとても拗ねた口調…。
私、何かした???
とりあえず、帰ろう。
「じゃあ、私帰ります。お邪魔しました。みなさんのパフォーマンスすっごく素敵でした!」
そう言って帰ろうとする私に、ジェジュンオッパが耳打ちした。
「ユチョンが拗ねてるのは、美桜ちゃんを俺たちにとられたからだよ。これからもユチョンをよろしくね。」
*****
もう!いくら美桜が可愛いからって、みんな美桜を見てニヤニヤしすぎ!俺の美桜なんだぞ!
年上の二人はオッパって呼ばせて嬉しそうにしてるし、ジュンスなんか…。何がジュンちゃんだ!俺がふざけてジュンちゃんって呼んだら怒るくせに!
「美桜ー今日どうだった?」
「すっごく楽しかった!生ってやっぱり凄いね!」
「ふーん…そっか。誰が一番かっこ良かった?」
俺は美桜を抱き寄せながら尋ねた。
「みなさんかっこよかったけど…一番はユチョンだよ。」
ぎゅーっ
「ありがとー!」
俺は美桜を力強く抱きしめ、思いっきりキスしようと顔を近づけた。
「ゴホン!ゴホン!お前、俺の存在忘れてるだろ?そういうことは、二人っきりの時にしてくれ。運転に集中できない。」
「ごめんなさい…。」
「いや、美桜さんは悪くないよ。俺は、君のことになると、周りの目も気にせず鼻の下を伸ばすどっかの誰かさんに言ってるんだ。」
*****
ヒョンは俺たちを美桜の家まで送ると、「今日はしっかり休んで明日に備えろよ。夜更かしはほどほどに。」と俺だけに聞こえるように言って去っていった。
「マネージャーさん良い人だねー。」
美桜は家に入るなりそう言った。
「まあね。口うるさいけど(笑)」
「そんなこと言っちゃダメだよー。ユチョンを思って言ってくれてるんだから。」
「うん。あ、そうだ!忘れるとこだった!はい、美桜にプレゼント。」
「プレゼント?」
「うん。この前大阪に行った時に見つけたんだ。
俺たちもうすぐ付き合って1年でしょ?その記念にちょうどいいかなーって。まあ、1年記念はその日に派手に祝うつもりだけど。」
「ありがとう。…開けていい?」
「うん。」
「わぁー!リラちゃんだ!可愛いー!リラちゃんがたこ焼き食べてる!可愛いー!」
美桜にプレゼントしたのは、美桜の大好きなクマのキャラクターが描かれている小さめの収納箱。
たまたま大阪で目にして、「写真やアクセサリーを入れるのにちょうどいい物がないの。大きいのだとちょっと邪魔だし…」と前に美桜が言っていたのを思い出したから買った。
「ありがとー!可愛いし、大きさもちょうどいいし。…でも、いつももらってばかりで申し訳ないな…。」
「いいのいいの!俺が好きでプレゼントしてるんだから。」
ぎゅーっ
美桜を思いっきり抱きしめた。ここにはヒョンはいない。
車の中でお預けにされたキスを、何度も何度もした。
*****
「ユチョンたちは、絶対にもっと大きな会場で…東京ドームとかで…ライヴできるような人になるよ。」
夜、美桜は俺の腕の中でそう言った。
「ありがとう。そうなれるようにもっと頑張らないとね。」
「絶対になれるよ!今日確信したもん。ユチョンたちは、大きな場所で輝くべき人だよ。」
美桜が少し寂しそうに見えた。
俺は美桜の頭を撫でた。
「そうなっても、俺は変わらないよ。」
美桜は返事の代わりに、とても穏やかで綺麗な笑顔を俺に返した。
その笑顔がとても大人っぽくて色っぽくて、俺はしばらく美桜から目を離せなかった。
いつからこんな表情をするようになったんだろう…。
その笑顔を見た瞬間、「時間は確実に経っていて、俺たちは1年記念を迎えようとしているんだ」と俺はあらためて実感したのだった。
つづく
by rin1119a
| 2013-09-23 14:22
| プライド