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JYJの妄想小説ブログです。妄想小説が苦手な方は閲覧しないでください。JYJも妄想も好きな方は是非どうぞ(^^)気に入ってもらえますように(*´∀`)


by 凛

プライド 第54話

美桜に頑なに拒否されてしまった俺は、そのまま家に帰った。

俺…そこまで美桜に嫌われてしまってるのか…。
俺…知らないうちに美桜を傷つけてたのか…。
強い口調で俺の腕から逃れようとした姿を見て、すっかり落ち込んでしまった。

抱きしめた時、一瞬俺に身を委ねるような仕草を見せた気がしたけど…。そのあとの美桜の様子からすると、絶対に気のせいだったな。


プルループルルー

なんだよ、誰だよ…。
ん?ヒョン?
何だろう?

「もしもし?ヒョン?何?」
『ユチョン喜べ!めちゃくちゃ良い仕事が来たんだ!脚本見せるから、今すぐ事務所に来てくれ!』
「俺そんな気分じゃ…」
『いいからさっさと来い!』

ヒョンは言いたいことだけ言って、電話を切ってしまった。
ヒョンのあまりの迫力に押されて、無気力状態のまま渋々事務所に向かったのだった。


*****

「もうすぐクランクインだから、返事は急いでほしいそうだ。お前次第だけど、俺は本当に良い仕事だと思うんだ!」

ヒョンの言う良い仕事は、日本映画の出演だった。
すでに他の俳優がキャスティングされていたけど、その俳優が全治半年の大怪我を負ったから俺にオファーがきたらしい。

「本格社会派映画だ。脚本読んだけど、本当に素晴らしい。お前の役は難しい役所だけど、これを演じきれば間違いなく一皮剥けるぞ!」

ヒョンに勧められるがまま、俺は脚本に目を通した。

映画の舞台は、銀行。
主人公は入社15年目のベテラン銀行員。
銀行の中での人間関係・私利私欲にまみれた出世争い・お客さんのことは二の次の営業…そんな銀行の暗い面を描きながら、銀行でプライドと志を持って頑張る人たちの闘いを描く。

俺の役は、3番目に名前が書かれている。
大学時代に韓国から留学してきて、そのまま日本で就職した。主人公と同じ支店で働く7年目の銀行員。

彼の両親は商店を営んでいて、いつも銀行の営業マンが商店に訪れて経営の相談に乗ってくれていた。幼い彼にとっては、その営業マンは正義の味方そのものだった。
その人のようになりたくて銀行員になった。でも、現実はお客さんの利益にならない商品を売りつけているだけ…。

そんな現実や銀行内のしがらみに嫌気がさしているけど、子供の頃の気持ちを忘れたくないと思っている。
夢と現実の狭間で揺れ動きながら、必死にもがいている…。


すごく良い…。
俺は銀行のことわからないけど、夢や理想通りにいかなくて辛い気持ち・現実に押し潰されそうで辛い気持ちはよくわかる。それでも頑張りたいと思う気持ちも…。
この役…良い役だ…。

「ヒョン!俺この仕事引き受けるよ!脚本も役も気に入った!難しい役だけど絶対にやりとげる!」
「よし!じゃあ、OKて伝えるぞ!ユチョン、頑張れよ!」
「うん!」
良い仕事が来た。
今年は日本ツアーもできるし、こんな良い仕事ももらえるし、良い年だな。

美桜に拒否されてしまったショックは、払拭させることができた。それくらい嬉しいオファーだ。
よし!頑張る!


*****

数日後


「ユチョン、明日の昼空けとけよ。」
「明日の昼?特に何もないけどなんで?」
「寺川さんが明日の昼に来るんだ。」

え、美桜が?
美桜が来るからって、なんで俺が予定を空けるって話になるんだ?

「お前の役作りに協力してもらうんだ。お前、銀行員のことなんて全然わからないから、役の気持ちとか掴みづらいだろ?だから、現役の銀行員の話を聞けば、少しは掴めるかと思ってな。それで、寺川さんに頼んだら快く引き受けてくれたんだ。本当に良い人だよなー。」

そういうことか…。
ちょっと会いづらいけど、美桜と話せるのは嬉しい。
役作りにも参考になるし、ここはこの前のことは忘れよう。

*****

翌日


「いやぁー忙しいのにすまないね!」
「いえ、私でお役に立てるならいくらでも話します。…パクさんの参考になるような話をできるように頑張りますね。」
美桜は時間通りにやって来た。
またパクさんか…ヒョンの前だから仕方ないけど…。

「ありがとう!じゃあ、俺は出かけるから、じっくり話してくれ。」
「え!?社長が同席されるんじゃ…。」
「客の俺がいちゃ、君もぶっちゃけた話なんてできないだろ?よりリアルな話をして、ユチョンの演技に役立ててほしいからさ。よろしく頼むよ。」
「…はい。」

「ユチョンはしっかり勉強するんだぞ。」
「う、うん。」
「昼飯はそこにある寿司だ。二人で食べながら色々話せよー。じゃあなー!」

驚いている俺と美桜を社長室に残し、ヒョンは去っていった。

いきなり二人っきりなんて…。
この前のことは忘れよう…て思ってたけど、キツいな…。

美桜も驚いているようだ。
まあでも…とりあえず、座ろっか…。
このまま二人で立ったままでいるわけにもいかないし。

「美桜…とりあえず座ってお寿司食べようよ。」
「は、はい。」


つづく
by rin1119a | 2013-10-05 23:18 | プライド