運命の人 第24話
2013年 12月 07日
俺…何やってんだよ…
いつもおっとりしてる茉莉子があんな声出すなんて…そんなに支店長が良いのかよ…
そう考えたら、今まで抱え込んでいたものが爆発してしまった。
支店長が良い人なのはわかってるよ。
俺は、学生の頃、うちの会社の説明会で支店長と話したことがあるんだ。支店長(その頃は新卒採用担当だった)はめちゃくちゃかっこよくて、『俺はこんな人になりたい!社会人ってカッコいい!』と憧れた。
入社3年目の今年、支店長と同じ場所で働けて、気にかけてもらえて本当に嬉しいんだ。
一緒に働いていると、俺が思っていた以上に凄い人だとわかった。
だから…わかってるよ。
いちいち茉莉子がむきにならなくてもな。
でも…わかっているからこそ、自分なんかじゃ敵わないからこそ、余計に腹が立つんだ。
ブーブー
さっきからケータイうるせぇ…誰だよ…
…神崎か…え?アイツ何回かけてくるんだよ。嫌がらせか?
何か用かな…めんどくせぇ…
「もしもし…」
『あーやっと出たー!』
「何?何か用?」
『うっわ!アンタ、声暗すぎ!何かあったん?』
「…別に。」
『ふーん。なあなあ、彼女さんと最近どうなん?』
「…用ってそれ?」
『彼女さん…茉莉子ちゃんやったっけ?茉莉子ちゃんとケンカでもしたん?さっきから声めちゃくちゃ暗いで。』
「…なあ…俺…どうしたらいい?茉莉子のこと好きなのに…傷つけたくない、大事にしたいって思ってるのに…俺…傷つけてるんだ…。離してあげたい…でも…できないんだ…」
小さい体がガクガク震えてた。
目をぎゅっとつぶって、怖さに耐えてた。
そんな怖い想いさせたくない。
茉莉子の笑った顔が好きなんだ。
なのに…俺は…
*****
「最近、考え事が多いね。」
「そう?」
「そうだよ。最近ずっと。…そんな顔をしてる原因は…茉莉子ちゃんだよね?」
「…いや…」
佐伯さんを送った後、俺はcherryに来た。なんとなく帰る気にならなかったから。
「茉莉子ちゃんもね、最近深田くんと同じような表情してるよ。」
「え?」
彼女が気になって仕方ない。
最初は、真面目でコツコツ頑張る子だな…って思ってただけだったのに。
「素直じゃないよね、二人とも。」
そう呟くと、マスターは別の客の所へ去っていった。
*****
私は、部屋で泣いていた。
山口さんの目や口調や力が怖かったのもある。…でも、あの優しい彼をそんな風にさせてしまったのは、私だ。
きっとたくさん傷つけてきた。口には出してないけど、いっぱい悩んでたんだと思う。
私は、なんてズルイ人間なんだろう。
彼への申し訳なさ・自分への苛立ち…色んな気持ちが重なって、涙が止まらなくなった。
*****
「ママー茉莉子おねえちゃんからお返事まだー?」
「まだよ。茉莉子お姉ちゃんも忙しいのよ。…あ、もうこんな時間だから寝ようね。」
「嫌だー!茉莉子おねえちゃんのお返事待つー!」
「だーめ。もう遅いから寝るの。」
はぁ…本当にあやめは佐伯さん大好きね。
深田くんと佐伯さんが結婚すれば…あやめも喜ぶかしら?
…失恋しちゃうけど(笑)
佐伯さん、山口くんに気持ち伝えられたかな…。
*****
全然眠れなかった…
ブーブー
山口さん?…こんな朝早くにどうしたんだろう…
「もしもし?」
『あ、おはよう!体調どう?』
いつも通りの明るい声…
「もう大丈夫です。あ、ありがとうございました。」
『良かったー!じゃあ、一緒に会社まで行こー!』
えっ?
私が戸惑っているうちに、電話は切られ、30分後くらいに彼はうちに私を迎えに来た。
私と彼は、この日から毎日一緒に通勤することになる。
*****
佐伯さんと山口は、最近毎日仲良く一緒に出勤してくる。
その姿を見るたびに、俺は複雑な気持ちになる。
「茉莉子可愛いんですよー!」
山口は、助手席の俺に自慢げに話してくる。…自慢げに…というのは、多分俺の気のせいだが。
「…うまくいってるみたいだな。」
「はい!最中の時も可愛いんですよ!」
なんなんだ…
付き合ってるんだから、当たり前だが…
「…お前、真っ昼間からそんな話すんなよ…」
「じゃあ、真っ昼間じゃなかったらいいんですか(笑)?」
「…俺は、他人の床事情を聞く趣味ねえよ…」
なんだか、佐伯さんが本当に山口の彼女なんだと見せつけられているようで…
俺、冷静に返せてるよな?取り乱したりしてないよな?
山口は、俺の知らない佐伯さんを知っている。その事実がこんなに自分を苦しめるなんて…。
少し気になるだけだったのに…今俺はあの子のことが頭から離れない。
この歳になって、またこんな気持ちになるなんて自分でも驚いてる。
可愛い笑顔も、頑張り屋な所も、ちょっと引っ込み思案な所も…全部…好きだ。
この気持ち…どうやったら治まるんだ…。
つづく
いつもおっとりしてる茉莉子があんな声出すなんて…そんなに支店長が良いのかよ…
そう考えたら、今まで抱え込んでいたものが爆発してしまった。
支店長が良い人なのはわかってるよ。
俺は、学生の頃、うちの会社の説明会で支店長と話したことがあるんだ。支店長(その頃は新卒採用担当だった)はめちゃくちゃかっこよくて、『俺はこんな人になりたい!社会人ってカッコいい!』と憧れた。
入社3年目の今年、支店長と同じ場所で働けて、気にかけてもらえて本当に嬉しいんだ。
一緒に働いていると、俺が思っていた以上に凄い人だとわかった。
だから…わかってるよ。
いちいち茉莉子がむきにならなくてもな。
でも…わかっているからこそ、自分なんかじゃ敵わないからこそ、余計に腹が立つんだ。
ブーブー
さっきからケータイうるせぇ…誰だよ…
…神崎か…え?アイツ何回かけてくるんだよ。嫌がらせか?
何か用かな…めんどくせぇ…
「もしもし…」
『あーやっと出たー!』
「何?何か用?」
『うっわ!アンタ、声暗すぎ!何かあったん?』
「…別に。」
『ふーん。なあなあ、彼女さんと最近どうなん?』
「…用ってそれ?」
『彼女さん…茉莉子ちゃんやったっけ?茉莉子ちゃんとケンカでもしたん?さっきから声めちゃくちゃ暗いで。』
「…なあ…俺…どうしたらいい?茉莉子のこと好きなのに…傷つけたくない、大事にしたいって思ってるのに…俺…傷つけてるんだ…。離してあげたい…でも…できないんだ…」
小さい体がガクガク震えてた。
目をぎゅっとつぶって、怖さに耐えてた。
そんな怖い想いさせたくない。
茉莉子の笑った顔が好きなんだ。
なのに…俺は…
*****
「最近、考え事が多いね。」
「そう?」
「そうだよ。最近ずっと。…そんな顔をしてる原因は…茉莉子ちゃんだよね?」
「…いや…」
佐伯さんを送った後、俺はcherryに来た。なんとなく帰る気にならなかったから。
「茉莉子ちゃんもね、最近深田くんと同じような表情してるよ。」
「え?」
彼女が気になって仕方ない。
最初は、真面目でコツコツ頑張る子だな…って思ってただけだったのに。
「素直じゃないよね、二人とも。」
そう呟くと、マスターは別の客の所へ去っていった。
*****
私は、部屋で泣いていた。
山口さんの目や口調や力が怖かったのもある。…でも、あの優しい彼をそんな風にさせてしまったのは、私だ。
きっとたくさん傷つけてきた。口には出してないけど、いっぱい悩んでたんだと思う。
私は、なんてズルイ人間なんだろう。
彼への申し訳なさ・自分への苛立ち…色んな気持ちが重なって、涙が止まらなくなった。
*****
「ママー茉莉子おねえちゃんからお返事まだー?」
「まだよ。茉莉子お姉ちゃんも忙しいのよ。…あ、もうこんな時間だから寝ようね。」
「嫌だー!茉莉子おねえちゃんのお返事待つー!」
「だーめ。もう遅いから寝るの。」
はぁ…本当にあやめは佐伯さん大好きね。
深田くんと佐伯さんが結婚すれば…あやめも喜ぶかしら?
…失恋しちゃうけど(笑)
佐伯さん、山口くんに気持ち伝えられたかな…。
*****
全然眠れなかった…
ブーブー
山口さん?…こんな朝早くにどうしたんだろう…
「もしもし?」
『あ、おはよう!体調どう?』
いつも通りの明るい声…
「もう大丈夫です。あ、ありがとうございました。」
『良かったー!じゃあ、一緒に会社まで行こー!』
えっ?
私が戸惑っているうちに、電話は切られ、30分後くらいに彼はうちに私を迎えに来た。
私と彼は、この日から毎日一緒に通勤することになる。
*****
佐伯さんと山口は、最近毎日仲良く一緒に出勤してくる。
その姿を見るたびに、俺は複雑な気持ちになる。
「茉莉子可愛いんですよー!」
山口は、助手席の俺に自慢げに話してくる。…自慢げに…というのは、多分俺の気のせいだが。
「…うまくいってるみたいだな。」
「はい!最中の時も可愛いんですよ!」
なんなんだ…
付き合ってるんだから、当たり前だが…
「…お前、真っ昼間からそんな話すんなよ…」
「じゃあ、真っ昼間じゃなかったらいいんですか(笑)?」
「…俺は、他人の床事情を聞く趣味ねえよ…」
なんだか、佐伯さんが本当に山口の彼女なんだと見せつけられているようで…
俺、冷静に返せてるよな?取り乱したりしてないよな?
山口は、俺の知らない佐伯さんを知っている。その事実がこんなに自分を苦しめるなんて…。
少し気になるだけだったのに…今俺はあの子のことが頭から離れない。
この歳になって、またこんな気持ちになるなんて自分でも驚いてる。
可愛い笑顔も、頑張り屋な所も、ちょっと引っ込み思案な所も…全部…好きだ。
この気持ち…どうやったら治まるんだ…。
つづく
by rin1119a
| 2013-12-07 09:56
| 運命の人